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「むぅ…」


その日、隊舎にはあたししか居なかった。副隊長の万那、三席の朱珠、四席の翠緑は、3人揃って現世に向かっている。
よって今日の零番隊はあたし1人でのデスクワークというわけだ。


「山じいも酷よね、みーんな現世なんてさ!」


(冬獅郎の所に遊びに行きたいな)


いつもは万那がやってくれる書類整理も、今日は1人で全てこなさなければならない。サボってばかりのあたしにはかなり堪える訳で。そうは言っても、流石にこの状態で遊びに行ってはいけない事ぐらいあたしにも理解出来ていた。


「―――…死ぬ」


(きっと山じいはこれが狙いだったんだな)


筆を置き、パタンと机に伏せる。そのまま動かない。時計の秒針がカツン、カツンと音を立てて動いているのが分かって、どうしようもなく寂しい気持ちになった。


「…冬獅郎、」

「なんだ」

「…うぉうっ!?」


返事が返って来ないと分かりながらぽつりと無意識呟やいた言葉にまさかの返答があり以上なまでに戸惑う。驚いて振り向くと、冬獅郎が呆れたように立っていた。


「お前、何してんだ」

「お仕事」

「筆も持たずに机に伏せてて何が仕事だ」

「一休みしてたんですー」

「どうせ久々過ぎて集中出来て無かったんだろ」

「…」


冬獅郎に本当の事を言われて何も反論出来なくなったあたしは、ゆっくりと向き直りまた机に伏せた。見兼ねたのか、冬獅郎は深くため息をつくとカサッと音を立ててあたしの目の前に何かを置いた。


「松本が阿散井から調達してきた。余ってるから食え」

「む?」


むくり、と顔をあげるとそこには茶色の紙袋があった。ごそごそとその紙袋を漁りはじめる。その中には2、3個の鯛焼き。見た瞬間、あたしは心が晴れていくような気がした。


「鯛焼きー!」


1つ取り出すと勢いよく食べはじめる。
久々に食べた尸魂界の鯛焼き。それは幸せを感じさせる優しい味で、心が懐かしさと幸福で満ちていく気分だった。多分今あたしは間抜けな顔してるんだろうな。そう思いながら、あたしは鯛焼きを口に運び続けた。


「冬獅郎も食べなよ」

「俺はいい。隊舎にも余りある」

「そんなに姉様持ってきたの」


恋次怒ってる、きっと。冬獅郎はソファーに座ってくつろぎ始めた。あたしはそんな冬獅郎を見ながらそろそろ仕事を始めないと冬獅郎が怒り出すな、と思いながらも鯛焼きをもふもふしている。あ、冬獅郎が振り向いた。怒られるよほら。


「今日ぐらいゆっくりやれよ、俺居てやるから」

「…は?」

「は?ってなんだ」

「いや、冬獅郎がそんな事言うと思ってなかった。つか冬獅郎仕事は?」

「終わった」

「え!まだ1時だよ!?早くない!?」

「もういいだろ俺の事は!早くやれ!」

「あーやっぱり怒ったよ冬獅郎の怒りん坊ー!」

「うるせえ!」


ちらっと見えた冬獅郎の顔が心なしか赤くて、あたしの為に早くあがって来てくれたんだと分かった。冬獅郎があたしの前から紙袋を奪うと、ガサガサと余りの鯛焼きを取り出し、無理矢理に口に含みあたしに背を向けてまたソファーに座った。


「ありがとう冬獅郎」

「礼言うぐらいなら早くやれ」

「素直じゃないんだから」

「うるせえよ」








suite suite suite





(素直じゃない君が大好き)

























091011
移転前の拍手ログ、suiteシリーズ日番谷ver.もろ長編引きずっててすみません(^O^)でもこれしか思い付かなかったんだ!
暇が出来たらシリーズページに移そうと思います。いつになるかわかんないけど^p^
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