BLEACH | ナノ






髪を切ってみた。評判がいいと自負していたけど、でも切った。理由は簡単、単純に失恋したから。というか、あたしが失恋だと判断したから。
初恋は実らないと聞いた、女の子にはよくある女子数人でテキトーに会話している拍子に。その後1人になってすぐさまその言葉を思い出して、そういや自分は初恋の真っ最中で隙を見てはあしげく相手の元に通い、その度にいろいろな人に怒られながらそれでも懲りずに通い詰めているような奴なわけで。思い出すのはあの呆れ顔で早く帰れと言わんばかりの視線と口調。そこでふと、あ、この思いは実らないんだな、と思った瞬間になんだかバカらしくなったしまったのだ。
しかも昨日なんかたまたま見た占いがもの凄い悪くて、この後に及んで最悪な結果だし第一そんなの今目に付かなくてもいいし最早そんなことさえ気にしてしまっている自分が嫌になって、ばっさり。
そりゃそうだ、何の関係もないあたしに毎日毎日仕事の邪魔されていい気分な訳がない。仕事を放り出して自分の所に来られてもどうしようもない。迷惑でしかない。全部あたしの勘違い。
どうせ冬獅郎はあの子が好きなんだ、幼馴染で健気で優しいあの子のことが。なんだ、心の底では分かってたことじゃないか、気づかないフリしてただけじゃないか。追い出されないことをいいことに好かれている気分に浸っていただけじゃないか。なんてバカな自分。
何で切ったんだ、と言われても 原因である張本人に「あなたにフラれたからです」なんて誰が言えようか。ていうかまずそうじゃないしあたしが決めただけだし冬獅郎は悪くない。それでも、占いなんかで髪をばっさり言ってしまう程度の精神状態のあたしはその質問を誤魔化す気力もなく気づいたらごく普通に「失恋した」と発していた。


「…」

「何、無言」

「いや、お前ってそんな相手居たんだな」


そんな相手、という辺りがなんとも言えない。居ますよ、目の前に。恋に破れたと嘆きながら無くなった後ろ髪を引かれて結局またここにくる程度に未練がましくなるほど好きな相手が今そこに。「へー…」とかいかにも興味なさそうに自分の仕事をしている彼を横目で見ながら、やっぱりあたしなんか眼中にないんだろうな、なんて。こんなこと考えて、髪を切った意味が全くない。ただの髪切り損というか、もう何もかもバカらしいなぁ、と思ってばかりだ。
久々に晒されたうなじの辺りを摩りながら、あー切っちゃったな、とか無駄に再確認して当たり前のようにソファに寝転がる。こんな事ばかりして、自分で自分の首を絞めてることくらい分かってるのに。ここは休憩場じゃねぇんだっての、とか自分で思いながら静寂の中することもなく目を閉じた。


「…似合うんじゃねえの?」


すっかり油断していたところに突然言われて目を開けたまま固まってしまった。混乱。ただただ混乱して次には起き上がって声の主を見ていた。「何だよ…」と不服そうに、でも若干顔を赤らめているその主を確認してから、あ、あたしは褒められたんだ、と認識する。と同時に恥ずかしくなって、部屋には顔を赤らめて見つめあっている2人という謎のシチュエーションが生まれた。
似合ってるって、言われた。そこまで乙女になってるつもりはなかったけど、そんな簡単なことで赤くなるまで喜んでる自分に驚きながら、あたしはまたうなじを摩った。













(本来の意味なんてどうでもよくなっちゃって、苦笑。)
























131206
自分が髪を切りたいなって思ったのでついでに
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