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彼女はよく池袋に現れた。多分あのクソノミ蟲に行くなと言われているんだろうに、それでもちょくちょく顔を出しては俺を探して、俺の姿を見ると彼女は周りに花が咲いたように笑った。
今日も俺の所に彼女は遊びにきた。他愛ない話を俺の休憩が終わるまで、休みだったら飽きるまでしているだけ。本当に不毛だがコイツが楽しそうにするもんだから俺も悪い気はしない。
「…あ、」
彼女のケータイから着信音。焦った表情からして相手は読めていた。
「静雄、ごめんちょっと」
「あぁ」
他の電話やメールには気にも止めずに話しまくっているのに、アイツからの電話だけは必ず答える。そりゃそうだ、名前とアイツは俗に言う“恋人同士”なのだから。それは分かっている。それでも1つだけ俺には分からない事があった。
彼女は臨也の話になると恐怖の表情を見せるのだ。
電話を終えた名前が再び小走りで寄ってくる。困った風に眉を下げながら彼女は苦笑した。
「へへ、お仕事ちゃんと手伝えって怒られちゃった」
「お前まだアイツの仕事手伝ってんのか」
「あたしが言い出したことだから、しっかりやんないと」
「早いとこやめておけよ。あんなバレたらケーサツみたいなこと、お前がやることねぇだろ」
「静雄はそればっか」
そう言うと名前は「そろそろ行くね」と踵を返し駅へと向かおうとする。俺からするとだいぶ小さく見えるその背中には日に日に見えない重りが増えているような気がして、俺は思わず彼女を呼び止めた。
「名前」
「……何?」
「今日は行くな」
「何で?」
あくまで微笑んだままの彼女。それを見ているのが辛かった。
「働き蜂じゃねぇんだから、そう毎日アイツの言うこと聞くことねぇだろ」
「あたしが働き蜂だったら臨也は女王蜂?どっちかっていうと蟻じゃない?黒いし」
「んなことどうでもいいんだよ」
茶化すなと言っても彼女は表情はそのまま、貼付けたように苦しそうな笑顔。
なぁ名前、お前本当は無理してんだろ?本当はそんな仕事したくないんだろ。お前がどんなにに苦しんでいてもアイツは構いやしないんだぞ。寧ろこの状況さえ楽しんでいそうな野郎なのに、何でおまおはそこまでするんだ。
数秒の無言。道路を走る車は赤信号で止まっていて、それさえも押し黙っている気がした。彼女は口を開く。そして青信号で進み出す車の雑音に掻き消されるすれすれの声で彼女はまた苦笑した。
「使えなくなった働き蜂は、女王様に食べられちゃうんだよ」
果ては蜘蛛の糸
(飛べなくなる前に早く)
111020
ギリギリ10月ズザザザザザ_ノ乙(、ン、)_
蜂蜜深い曲すぎて読めない。分からない。地味に難しい。途中で諦めた。
.5シリーズをもう1つやりたい気持ちが消える前に早く 早くenhAnceを