enhAnce | ナノ
覆うように、彼女の手に包まれているカップ。その中にはブラックコーヒー。あまり好きではないと言っていたのに、いきなり飲みたいと言い出したから俺が入れてやったものだ。
「急にどうしたんだよ、嫌いなんじゃねえのか?コーヒー」
「ミルクと砂糖が入ってれば普通に好きだよ?」
「なら入れろよ」
「今日はいいのー」
元々コイツは気まぐれだと思っているから特におかしいとは思わないが、結局思考は謎のままだ。
ブラックコーヒーを飲んでいる事以外は、彼女になんら変わった様子はない。相変わらず苦そうに顔をしかめながら、カップを口に運んでいた。
「ねぇ、静雄」
「ん?」
「もし、あたしがこのコーヒーを飲み終わった瞬間に世界が終わるとしたら、あたしは最期に静雄と同じものを飲んでた事になるよね」
「何だいきなり」
「なんか、そう考えると幸せだなって」
「…」
「苦いのもいいかなって、思うの」
いつ終わるかもしれない世界。もし今この時に、この瞬間に人類が滅んでしまったとしたら、最期は何を望むべきなのか。
『もしあと1日で世界が終ったら何したい?』
暇つぶしのように問われるそれがもし現実になったらと考えた時に、彼女は多分俺を選んでくれるのだろう。変わり者だと笑われる事も多い彼女だが人一倍優しい事は間違いなく、俺は彼女のそういう所が好きなんじゃないかとか不意に思ったり。
「終わらないよ、お前は」
3分の2程余っているブラックコーヒーにミルクを注ぐ。スティックシュガーの先を切りながらそう告げると、彼女は驚いた表情でこちらを見た。
「静雄、砂糖なんか入れて大丈夫なの」
「別に俺甘いの嫌いじゃねぇし、たまにはいいだろ」
ていうかそれあたしの、と取って付けたようなツッコミを軽くスルーしながら俺はカップを口に運ぶ。少し温くなったコーヒーに慣れないミルクといつもより甘い砂糖の味が口の中に広がって、名前がいつもこれを飲んでいるのかと思うと少し不思議だった。
「今ので、お前は俺とは別の物を飲んだってことだ。だから終われない、違うか?」
「……ははっ」
「なんで笑うんだよ」
「静雄が変なこと言うから」
「お前ほどじゃねぇよ」
捕われない思考で
(始まりの記憶へ 行こうか)
110415
訳がわからなすぎて絶望_ノ乙(、ン、)_いやん
シメが思い付かなかったので強制終了したのぜ(^ω^三^ω^)プエー