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ノミ蟲みたいな女だと思った。飄々とした口調も、何もかもナメきったような目も、居るだけで俺の神経を逆なでするところも、とにかく何もかも、あのクソノミ蟲と瓜二つだった。
何度か俺の前に現れたその女は、どうやら情報屋をやっているらしい。全く、予想通り過ぎて吐き気がする。情報屋ってのはみんなそんなに性格が悪いのか。それとも情報屋という職業がそうさせるのか、ぶっちゃけ俺には関係ない話だが、そう疑問に思わずにはいられなかった。


「あっシズちゃんだ!久しぶりー!」

「お前…何回池袋に来るなって言ったら理解出来るんだ?」

「そんなに睨まないでよ。あたしに会えて嬉しいくせに」

「よし今すぐお前の頭カチ割ってやるからこっち来い」


ハハハ、と楽しそうに笑いながら、彼女は俺の前方でクルクルと回っている。悪びれた様子もない彼女の、無邪気な表情を見ていれば、誰も彼女が情報屋なんて陰湿な仕事をしているなどと思い付きもしないだろう。


「素直じゃないなぁシズちゃんは」

「その呼び方はやめろ」

「この呼び方すると喜ぶよって臨也が言ってた」

「あンのクソノミ蟲…!!」


ギリギリと拳に力が篭る。それに気付いているのかいないのか、彼女は無理に距離を詰めようとはしてこなかった。


「シズちゃんってば怒ってばっかり。あたしはこんなにシズちゃんが好きなのに」

「うるせぇ。お前の出任せなんざ聞きたくねぇんだよ」

「出任せなんかじゃないよ。あ、そうじゃん、あたしの頭カチ割るんでしょ?そしたらきっと分かるよ、出任せじゃないこと」

「お前それ本気で言ってるのか」


俺がやろうと思えばコイツの頭なんかすぐに壊れちまうだろう。実際の所やろうなんざ思わないが。仮にもコイツは女だし。あのノミ蟲だったら容赦なく吹っ飛ばしてやりたいが。



「曖昧が1番ハッキリしてるんだよ、シズちゃん」

「…?」



真実を突き止めようとしても、人が言うことには嘘があるかも知れない。事象を検証したところで、もしかしたら今だに科学では発見されていない事実があるかもしれない。そう考えると、“その出来事は曖昧である”という事が1番ハッキリした事実なのかもしれない。
俺は彼女が言っている事が理解出来なかった。さっきから訳の分からない事ばっかり言いやがって。


「あたしはシズちゃんが好き、でも臨也も好き」


“臨也も好き”。彼女の中では俺がアイツと同率なのか。それは彼女の中だけの事ではあるが、それだけでも無性に腹が立った。


「でもそれはあたしが口先で言ってるだけかもしれない」

「…」

「今シズちゃんが思ってるモヤモヤ、それが今は1番ハッキリしてる事」

「……」


距離は変わらないのに彼女に1歩近付いたような感覚がした。何故そう思ったかは分からない。それでも、彼女が言った“モヤモヤ”は確かにあるのだけは分かった。俺はそれを何故か自然に受け入れて、立ち去ろうとする彼女の姿を見る事しか出来なかった。


「じゃあね、シズちゃん」

「もう2度と来んな」

「つれないなぁ」


軽やかな足取りで小さくなっていく背中はやはりただ無邪気な少女でしかない。人は見た目じゃない、それは納得せざるを得ない事実、だ。



「……曖昧、か」



ノミ蟲みたいな女だと、思った。










undecidable





(その心情の正体は、)

























100917
な ん だ こ れ は w
何がどうなってどうなったんだ。結局なんだ、どうしたいんだ。シズちゃん助けてくれもう意味わかんないよぇぇぇ
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