過去ログ | ナノ


彼女は不定期に酷く落ち込む時がある。それは寝不足が原因になったり、テレビの占いが原因であったり、周りの影響であったり、臨也の所為であったり。理由は様々であるが、どうやら何かが引き金となって、自分ではどうしようもない程、心の闇に捕われてしまって動けなくなってしまうらしい。


「ただいま」


明かりの付いていなかった部屋に戸惑いもなく光を灯す臨也。その瞬間、部屋の隅にうずくまっていた彼女は、覚束ない足取りで彼に抱き着いた。表情を見せまいと臨也の腕の中に顔を埋めるが、彼女が泣き止む気配はなく、ただ嗚咽を繰り返しながら必死に自分の心との格闘を続けていた。


「臨也っ…いざや…」

「はいはい、淋しかったね」


深く自己嫌悪し、世界の全てと自分を比較し、他を羨み恨み、自分を妬み悔い。そしてまた嫌悪する。その連鎖を幾度となく繰り返す。自分が何者よりも劣っている、それに気付きながら改善しようとせず、ただこの嘆いている自分が好き。そんな事を自覚している自分が嫌い。今も彼に抱き着いて甘えて、多分自分は無償で臨也に抱きしめられる事を望んでいるのだ。なかなかにいい性格をした悲劇のヒロインではないか。自分自身に皮肉をいいつつも、抜け出せない闇に悪態をついてもがき続ける名前。自分は何故こんな事をしている?自分の心は何故こんなにも重い?何を悩んでいる?今自分は何を望んでいる?自分の変化?彼の温もり?優しい言葉?
―――甘ったれのバカか自分は。
永遠に尽きることのない嫌悪の言葉は正確に自らの心臓を抉り取る。流れ出る涙も拭かず、名前はただ自分が嫌で嫌で仕方なかった。


「今日は何があったの?」

「……」

「何か言わなきゃ慰められないよ」

「…臨也が、居なかった」

「…なんだ、そんな事か」

臨也は浅く息を吸うと、そのまま深く息をつく。ふわりと彼女の髪が揺れて、位置を変えずに着地した。彼のジャケットを握り締めて押し付けるような形で顔を隠す名前。その頬に掌を寄せると、臨也は優しく彼女の顔を自分に向けた。


「嫌になるほど甘ったれだなぁ、君は」

「っ…ぅぅっ」

「ほら。そろそろ泣き止まないと、明日目が腫れて騒ぐのは名前だよ?」


親指で目元を拭いながら、子供をあやすように眉を下げる臨也。泣き止まなければ、そう思う程に溢れて来る涙に、名前は強く瞼を閉じた。隙間から流れ落ちる涙さえ、罪悪感を誘う。これ以上彼に迷惑はかけられない。そう思うことさえ思い上がりである事も分かっているのに、なかなか離れられない自分に腹が立ち、また涙が頬を伝う。
臨也は困ったように再び息をつくと、今度は彼女の肩を抱き寄せて自ら彼女の顔を押し当てるようにして抱きしめた。


「こう見えても、意外と疲れてるんだけどな。俺」

「…ごめん、なさい」

「そうだねぇ、名前が早く泣き止まないと俺、過労死しちゃうかも」

「…っ…ぅ」


冗談混じりに皮肉を言う彼の声を聞きながら、名前は巡る自己嫌悪と涙を止めるべく必死に歯を食いしばっていた。



「大丈夫、俺はここに居るよ」



降ってきた声に目を見開く。一気に彼の存在がここにいる確信を持つ。無意識に顔を上げると、そこには今だ皮肉るよな臨也が、嫌がるそぶりもなく苦笑していた。


「そうやって、今度は嫌いにならないでなんて言うんだろう?嫌なヒロインだ」

「っ…臨也」

「なんでこんな甘えん坊好きになっちゃったんだか」


再度名前を強く抱きしめながら、臨也は自分に向かって微笑を浮かべていた。彼女の感情の変動と、自分の変化に気付きながら、ただ楽しそうに、嘲笑うように。


「好きだよ名前、愛してる」
















(これだから人間は)

























100621
たまに鬱にならないか…!自分ドリーマー過ぎて現実が嫌にならないか…!何でこの世界に臨也が居ないのに生きていなきゃならないのか疑問にならないか…!
そんな暗い自分用夢。臨也好き。だがこれは誰なんだか。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -