過去ログ | ナノ

俺達は原子だ。1人1人の力じゃ弱すぎて何も出来やしない。姿を見ることさえ出来ない。そんな小さすぎる粒。自分達は必死に生きてるつもりだけど、そんなの誰にも伝わらなくて、それを思い知らされた時、どうしようもない後悔に苛まれる。
答えの無い問い掛け、不安の根源。卑屈な考えしか浮かばない、疑問。


―――何故自分は生まれたのだろう。


俺達はその意味を共有する原子だった。


「あのさ、あたし…たまに怖くなる時があるの」

「何が?」

「―――…紀田君が。」


少なくとも、俺は知っている筈だった。彼女が俺を恐れている事を。彼女は分かっているんだ、この関係自体の意味と、その崩壊が近い事を。俺だって怖い。このまま彼女と関わっていたら、自分はどうなってしまうのだろうか、どうすればいいのか、もし彼女が居なかったら、俺はこんな臆病者じゃなかったんじゃないだろうか。そう、そうやって俺はいつも全てを彼女の所為にするんだ。何もかも彼女の所為。
俺が弱いのも、こんなに苦しいのも、こんなに辛いのも、こんなに恋しいのも。全部、彼女が言葉を発するから、彼女が息をするから、彼女が消えそうだから、彼女が笑うから。全て、彼女の所為。


「帰ろうか、紀田君」


薄く笑ったそのままで変わらない距離を示す俺の名前を呼ぶ彼女。俺の返事を聞かずまま歩き出す彼女の背中に向けて、俺は口を開いた。


「悪ィ、俺もうちょっとここに居るわ」

「そう?じゃあお先に」

「…あのさ」

「何?」



「――…正臣で、いい」



彼女は変わらない表情で扉を開けて去っていった。これが俺達の最後の会話になるとも知らずに。きっとあのまま、曖昧な関係を続けていても良いことは1つもなかっただろう。
あれからどれくらい時が過ぎただろうか。度々思い出す彼女の顔はいつになっても色褪せなくて、俺はまたあの後悔を繰り返していた。


「――…さおみ、…正臣」

「―――…あぁ、ごめん。ボーっとしてた」

「どうかしたの?」

「いや、なんでもねぇよ」

「ならいいけど」


俺の隣にはもう彼女は居ない。それが正しい選択だった。それについてはもう後悔はしていない。


「なぁ、サキ」

「何?」

「…俺って、何で生まれてきたんだろうな」


彼女が居なくなっても、疑問は無くならなかった。自分じゃ必死に答えを探しているつもりだけど、そんなの誰も手伝ってくれなくて、孤独を知った時、またどうしようもない後悔に苛まれる。
1人1人の力じゃ弱すぎて何も出来やしない。姿を見ることさえ出来ない。そんな小さすぎる粒。
そう、俺達は原子だ。
















(いないほうがいいと思ったんだ)

























100721
music:ヘブンズP(sm9880874)Atoms
よくわかんない感じになってしまった\(^O^)/原子とか自分には難しすぎた!

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