過去ログ | ナノ

外は雨。昼間だというのに薄暗い空の下で、天候に関係なく人が思い思いに歩いていた。ガラス張りの窓から空を見る。雲で覆われた空は、どうにも人を憂鬱にさせるものだ。


「さっきから外ばかり見て、何かあるの?」

「いや、何もないけど。ちょっとね」


無感情のままの問い掛けに、臨也はいつもの様に曖昧に答えた。あっそ、とだけ言ってまた本棚に向かった波江に対し、彼は独り言のように呟いた。


「今日はある人の命日なんだ」


ある少女の姿を想像しながら、臨也はまた外に視線を向ける。いつもより低い声色の彼に違和感を感じると、波江はちらりと彼を見てからまた作業に戻った。


「お墓参りとか、行かなくていいわけ?」

「こんな雨の日に?なんでわざわざ」


惚けたそぶりで言う臨也だったが、波江には彼が思っていた通りには見えなかったらしい。作業を続けながら、波江は半ば決定付けられたように問った。


「大切だったんじゃないの?その人」

「…まぁ、ね」


彼にしては珍しい素直な返答だった。憂鬱にさせる空。それは彼に対しても同じだったようで、俯き気味の臨也は波江も見たことが無かった。


(行けるもんなら行きたいさ)


だが今日行ったら、絶対にアイツがいる。
忌まわしき天敵の姿を思い出す。その隣には、彼が想い続けた彼女の姿。ふと思い立ったように、臨也はすぐにそのビジョンを頭から消し去った。


(俺はアイツに会いたくないだけで足を止める)


それだけは彼女にも勝る、本能的な嫌悪。だがそれによって、所詮自分の想いがその程度なんだと思い知らされるのも事実だった。せめて、せめて彼女が自分の隣に居てくれたなら、自分はどれだけ幸せだったのだろう。そう考える度にまた嫌悪が募る。果てしないループに嫌気がさして、臨也は思わず立ち上がった。


「何処に行くの?」

「ちょっと雨に当たってくる」

「そう」


短い返事を聞いて、臨也は雨の下へと踏み出した。行く宛ては無い。今彼女の元へ行っても、絶対にアイツに出くわすに決まってる。今日はアイツに勝てる気がしない。そう思った。
降り注ぐ雨は優しいというのに、あっという間に彼を濡らし、コートのファーは既にその意味を成していなかった。


「…冷たいな、」


見上げた空には青さなど無く、深い灰色に染め上げられている。彼はその下を真っ直ぐ道沿いに歩き出した。ただ憂鬱な想いを胸に、ゆっくりと。ゆっくりと。
















(多分、後悔はこんな色)





















100813
シズちゃん夢の臨也視点的イメージで(´д`)しゅごキャラの歌唄のBlue Moonを聴きながら。
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