ヤキモチ



私の名前はアリッサ。

アミュレイト国って言う小さな国の第一王女です。

そんな私…実はすっごく好きな人がいるんです!


「イキシア様、どうか私の気持ち受け取ってください!」

「断る」


この人、クールなこの態度がほんとたまらないんです!

でも、なかなか私の気持ちを受け取ってくれないのがほんと悲しいです…。


「残念だったなアリッサ」

「むむ、トールさん他人事すぎますよ?」

「だって俺関係ないし」


ううう、トールさんも冷たい…。

ちょっとした、ってほど小さな話じゃないけれど、今は盗賊をやってるイキシア様の所でお世話になっているわけですが…。


もう一目ぼれ!好き、この人以外に考えられない!!ってほどなのに、どうしても振り向いてもらえないこのもどかしさ。



「そんな事毎日やっててさ、イキシアに一体どうして欲しいんだよ?」

「それは…ヤキモチです!私の事を好きになってくれないのなら、せめてヤキモチくらいは妬いてほしいなと…」


ヤキモチって、それ好きになってくれって事なんじゃ…とそんな風に考えたが、あえてアリッサには言わずに咳払いをした。


「…いいかアリッサ。あいつはただの天の邪鬼だ。押して押して押しまくるからあんな素っ気ないんだぞ?」

「そうですか?私的にはかなり抑えてるんですけど…」

「ほほぉ、あれで押さえてるって言うなら全力はどんなものか気になるなぁ」


苦笑いをするトールを睨みつけ、憂鬱にため息をついているアリッサに良く聞けよと身をかがめた。


「押してダメなら引いてみろ、って言葉がある」

「引く、ですか?」

「ああ!ずーっと自分の事が好きだって言ってたやつが違うやつと仲良くして、自分に構ってくれなくなったら…」

「ううっ、すごく悲しいです!」

「それを利用して、作戦作ってみろよ!」


そんな上手くいくのかと言おうとしたアリッサの言葉が聞こえなかったのか、頑張れよ!とトールは背中を叩いた。

突然の事に高い悲鳴を上げトールを睨みつけるが、睨まれている事にすら気付かず口笛を吹き始めた。


うぅん。イキシア様を押しすぎてるから駄目?

でも引くって一体どうすればいいのかわからない…。


頭を抱え考え込んでいたアリッサだが、もうわからなくなってしまい半ばトールに八つ当たりをするように腕を叩き始めた。


「なんだよいきなり!」

「もう!難しいこと言うから訳が分からなくなっちゃったじゃないですかぁ!」


はぁ?と手首を握りトールは首を傾げていると、暴れていたアリッサは動きを止めた。

少しだけ後ろを向くと、何をやっているんだと言ったような顔をしているイキシアが立っているのに気が付き、声をかけようとするとアリッサはトールの腰回りに唐突に抱き付いた。


「ん?どうしたアリッサ?」

「……。もうイキシア様意味分からないんですもの。べーっ!」


子供のように下を出しふんっとそっぽを向いたアリッサを驚いたように見るイキシアに気づいたトールは、にんまりと笑い小さなアリッサに覆いかぶさるように抱きしめた。


「ちょっ!」

「しーっアリッサ。こっそりイキシアの顔見てみな、おもしろいぜ?」


耳元で囁いて来たトールに言われ、そっと前を見ると、不可解そうに立ち尽くすイキシアを見てアリッサは眉を潜めた。


「…すごく不機嫌そうじゃないですかぁ!」

「いや、あれでいいんだよ」

「不機嫌そうなののどこがいのですか!?嫌われちゃったらどうするんですかぁ!」


半泣き上体のアリッサに見かねたトールは、わざとイキシアに見えるようにアリッサの額にキスをした。

突然をそんなことをされたアリッサは、反射的に頬を平手打ちすると横によろめいたトールは勢いよく前に倒れ込んだ。

そんなに強く叩いてしまったのかと驚いて口元を押さえていると、離れたところにいたはずのイキシアはすぐ近くて片足を上げていた。


「っ…そんな思いっきり蹴る事ないだろ!?」

「うるせぇよ」


と、倒れているトールの背中を何度も踏みつけられるのを見てさすがに可哀想だと思ったアリッサはイキシアの腕にしがみついた。

やめてくださいと唇をかみしめて訴えると、自分の袖を握りアリッサの額を荒々しくぬぐいはじめたイキシアに痛いと訴えると赤くなった額を見て眉を潜めた。


「…ばい菌」

「え?」

「おい!俺はばい菌じゃねぇよ!」

「いいかアリッサ、あんな男と一緒にいると……はらむぞ」

「はらむ?」


何を言っているのかわからず首を傾げるアリッサとは違い、失礼な事を言うな騒ぐトールをもう一度踏みつけた。

余計なことをするなと念を押すように睨むつけると、この場を立ち去って行ったイキシアの背中を頬を染めたアリッサは見送った。


「何で赤いんだ?」

「だって、イキシア様のお顔があんなすぐ傍に…」

「…じゃあよかったじゃないか」

「はい!」

「ヤキモチも見れて」

まだ床に倒れ込んだままのトールとなるべく目線が合うようにとしゃがみ込んだアリッサはヤキモチ?と首を傾げた。

そうそうと頷き肘をつき手に顎を乗せ笑うトールを見て、さらに首を傾げる。


「……え?」

「だって、気にしてないやつがキスされてもあんな怒るわけないじゃん。あれ、ヤキモチだろ」


よかったな。

とにっこりと笑うトールを見て、アリッサは思わず大きな声を上げた。




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