ぼんやりと瞼を上げると、この目に映って見えたのは、いつもと変わらない天井。
あぁそうだ。
また今日が始まるのか…
変わるのは、日にちだけ。
二学期の始まる日へと近づくその日付が、変わっていくだけ。
…そろそろ、宿題を始めよう。
ジャッポーネの夏は騒がしいだの何だの言って、ビアンキと共に一週間の旅へと出た、俺専属の家庭教師。
居ないのもそれはそれで寂しい気がしてしまうのは、この生活に慣れた証だと感じる俺は、そろそろ末期だ。
長らく机の片隅に避けてあった、課題へと手を伸ばす。
何冊かのうちから、一番苦手な数学の冊子を開いた。
(げ…わかんねー…)
初めの、基礎問題。
しっかり考えれば、例え俺でも解けないような問題じゃないだろう。
しかし休み惚けで休んでいた脳みそがそう簡単に働くわけもなく、静かに冊子を閉じて学習机に頬杖を付いた。
ミーンミンミンミン…
開けはなった窓からダイレクトに伝わってくる蝉の鳴き声は、俺の鼓膜を麻痺させてしまう。
「ツッくーん、ちゃんと勉強してるのー!?」
階段下から声をかけてくる母親に、適当な大声で答える。
ごめん、母さん。
俺、勉強してません。
課題の間に見え隠れする、プリント。
それを引っ張り出して、裏側にする。
真っ白なその面に描くものは、どうしてこんなにも手が、ペンが進むのだろう。
…夏と言えば。
そう思ったときにとっさに浮かんできた南国フルーツ。
すいかでも、マンゴーでもなく。
パイナップルを描いて、その横に「骸。」と書き添えた。
僕の夏休み
(だってやっぱり)
(休みは休みたいんだもの)
fin