恋人ごっこ
いつもいつも必要以上に近い二人の間に、僕は割って入った。
いや、正確には入ろうとして、位置的には間違っていないのですが…
「ねぇ、邪魔。綱吉が見えない」
「骸、どいてよ。そこにいると雲雀さんが見えない」
しかし完全に二人の間に入り込むことは出来ないみたいです。
ことの始まりは、僕のちょっとした悪戯心。
僕の愛する綱吉君と、天敵の雲雀恭弥が付き合っているという事実が気に入らなくて、こっそりと綱吉君のあとをつけて来たのですが。
着いた先はやはり応接室。
疎まれながらも入り込んだまでは良いものの。
その場で繰り広げられる、目を覆いたくなるほど初々し過ぎる二人に見兼ねた僕がとった行動は。
応接室のソファー、二人の間に出来た50センチ足らずのふざけた距離に腰掛けた。
イライラしたんです、この僕が。
二人ともそっぽを向いて、
「今日はいい天気ですね」
「うん…そうだね」
そんな中身のない会話ばかりを繰り広げるものですから、笑うことすら出来ませんでしたよ。
だから僕が間に入ったというのに。
今度は何です?
直視出来ていなかった相手を、見えないだとか。
矛盾…実に人間らしい。
「クフフ…クハハハハ!」
「な…うるさいよ、君」
「骸…?」
そうか、そうですか。
「精々今はそのバカップルぶりを存分に発揮すると良い」
「ば…ばかっ…!?」
まだ僕にはやることがある。
この躯だって、そう長くは保たない。
「明日、明後日、その次の日も、綱吉君が雲雀恭弥、君のものであろうとも」
今は彼らの間に割って入ることが出来ないのなら。
「いつかは必ず、僕のものにして見せますよ」
彼らが恋人ごっこに飽きた頃、また奪いにくればいい。
「では。Arrivederci(また会いましょう)」
輪廻を巡って来た僕にとって、それくらい待つのは枯れ葉が落ちるのを待つようなものです。
その頃の応接室…
「ねぇ、綱吉」
「はい」
「彼はああ言っていたけれど、僕は君を手放す気はないから」
「…雲雀さん…!!」
甘い香りがしそうなほど、綱吉の頬が色づく。
その頬に触れた雲雀は、そっと微笑むと自分の唇をその頬に添えた。
そう。
骸が二人の距離を縮めてしまったことは、言うまでもない。
fin