あ゛ー、頭ガンガンする。
周りの声がすごい遠くに聞こえるし。
おっかしぃな、すぐ近くに居るはずなのに。
心臓もばくばくばくばく。
トイレに行こうかな、と 、立ったら急にクラッときた。
あ、やば、これはやばい。
フラつく足元をなんとか正して、周りに気付かれないように飲み会の雑踏から抜け出した。









飲みの席から少し離れたソファーに腰を下ろす。
立った拍子に急にアルコールが回ったくさい。
今まで平気だったのに何か胸がむかむかする。
今日はそんなに飲んでないのにな…。
始めにカルーアミルク飲んで次にビール飲んで、隣で飲んでる友人のワインが美味しそうだったから半分もらって、日本酒飲んだことないから先輩から一口もらって……
あ、だめだこれ完全にチャンポンやらかしてるわ。
頬に手を当たら、いつもより熱い気がした。
頬に当てた手を見たら真っ赤で、え!?って腕を見たら腕まで赤い。
嘘でしょと視線を下げたら極めつけに足の甲まで赤かった。
ちょっと待ってよ、これはかなりアレでしょ。
どうしようもない倦怠感が襲ってきて、猛烈にしんどい。
なんか、ちょっと、吐き気がする気が。
いや絶対吐かないけどね。
意地でも吐かないけどね。
吐き気なんて認めないけどね。


「なまえちゃん大丈夫?」


力なくソファーにもたれてたら声かけられた。
後ろに流した明るい髪、ヘラっとした読めない瞳、あー、佐助か。
気付かれないように抜け出してきたはずなのにな。
ちょっと今他人に気を使ってあげられる余裕ないんだけど。
ってか今のこの状態見られたくない。


「あは、顔真っ赤。林檎みたい。」


馬鹿にしに来たのかコイツ。
だから見られたくなかったんだよ情けない状態なのわかってるから恥ずかしい。
ふいって顔逸らしたら、ソファーが深く沈んだ。
え、ナニ、何隣座ってんの、


「お水飲める?」


隣に座った佐助の右手には、グラスに入った水がチャプリ。
氷も入って、きっと冷たいんだろうなぁ。


「いい……いらない…」


でも正直入らない。
お酒飲んで、それに合わせて肴もかなり食べたからお腹いっぱいで無理。
ってゆーか体調的に無理。
変に刺激しないで今すごい胸がムカムカしてしんどい。
水なんかより横になりたい…かも。


「俺様でよかったら膝貸すよ?」

「……え?」


今この人なんて言いましたかね?
いや確かに横にはなりたいけどそれだったらまずアンタがどいてこのソファーごと貸してくれ。


「しんどいんでしょ?大丈夫だよ俺様が看ててあげるから。一人にさせると心配だし。」


ね?って、そんな笑顔でコッチ向かないでよ。
膝ポンポンって叩かれても困るし。
迷ってたら、ほらって腕を引かれて、重力に従って私の頭は落下。
ダイブした先にはちょっと筋肉質だけど柔らかい太股があって、見事に着地。ナイスデース。


「ちょっと……」


身をよじって起き上がる前に、頭の上に佐助の手が乗せられた。
そのまま髪の流れに沿うように撫でられる。
ちくしょう、こんなの、卑怯だ。
ただでさえお酒入ってるのに、こんなことされたら甘えたくなる。


「お水飲みたくなったり、気分悪くなったら言ってね。」


心臓は相変わらずばくばくして、
きっとこれはアルコールのせいだ、と、頭を撫でる手の心地好い感触を感じながら、瞼を落とした。



吊り橋効果


アンタにドキドキしたなんて、そんなまさか、


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