ミ゛ーンミンミンと外では蝉達が僅かな命を散らして愛を叫んでいる。
射すように照りつける真夏の太陽も、炙るかのような連日35度超えの気温も、冷房の効いた部屋では全くの無意味。
28度を保たれた室内は実に快適。
部活への打ち込みで毎日汗だくになっているいつもの夏も、今年は珍しくそれとは無縁。
そういえば今年はまだ海に行っていないなぁと、毎年恒例の年間スケジュールを頭に浮かべた。


「元親、」
「あん?」
「今年海いったー?」
「行ってねぇ。」


大の海好きの元親が海行ってないとかまさか。
窓の外へ向けていた目線は思わず元親に。
タンクトップから覗く逞しい腕を見て、どうやら嘘ではないらしい。
問題を解くその肌の色は、例年より増して白かった。


「来年は海行こうな。」
「…うん。」


向かい合わせの整った顔がゆったり笑って、すっかり切れていた集中力を取り戻した私は、ノートの上に転がされたシャープペンを手に取った。



夏の形跡


クラスの誰よりも色白の夏にしよう

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