自分の為に一生懸命になるだなんて、正直よくわからない。
自分が現状に満足してしまえば、一生懸命になる必要性などないではないか。
高校受験だって、別段努力をするわけでもなく、当時の偏差値と内申を考慮して適当な学校に受験して合格。
人生二度目の受験を間近に控えた今、未だ白紙の進路希望票を目の前に、現在の自分にとって手頃な大学の名前で埋めようとしていた。


「じゃあさ、俺様と一緒の大学行こうよ。」


そんな私に待ったをかけたのが、この男である。





「どうして佐助と同じ学校に行かなきゃいけないの、」
「だって特に行きたい学校ないんでしょ?じゃあいいじゃない。」
「よくない。」


佐助の通っている学校なぞ、私の手頃な大学のレベルより上。
行こうと思うのなら、努力をしなければならないのは必須。
推薦でもAOでも決めて、早々に受験戦争を離脱する気でいた私にとっては予定外だ。


「佐助の学校、私の偏差値より上じゃない。」
「“今の”なまえちゃんの偏差値よりね。だってまだ夏前よ?諦めるには早くなくなくな〜い?」


そんな上じゃないと佐助は言うが、アンタの感覚と私の感覚を一緒にしないで欲しい。
昨年の模試結果を見れば、少しは現状を把握してくれるだろうか。


「どうせ高校受験みたく、適当に学校決めるつもりだったんでしょ?でもさ、やれるだけやってみてさ、それからでも遅くないんじゃない?」
「今から、頑張れっていうの、」
「なまえちゃんって努力嫌い?」
「嫌い。」
「俺様もきらぁーい。」


沈黙な私とは対照的に、佐助のカラカラと笑う声が室内に響いた。
「でもさ、こんな俺様でも頑張れたんだから大丈夫だよ」なんて、そんな適当なこと言わないで。


「どうして、頑張るの。頑張らなくちゃいけないの?」
「んー?」
「夢、とか、将来、とか、よくわからない。それなのに、就職がいいからとか、そんな理由で勉強して、偏差値高い学校行く気になれない。自分の為って言うけど、自分の為に頑張るって難しい。」


我ながら、この年で随分と子供じみたことを言ってるなぁと思う。
けれど、結局はそういうこと。
せめてもうちょっと大人の考えなら、安定した職につけるようにだとか、最終学歴だからと、取って付けたような理由で納得できるだろうが、それには私はあまりに子供すぎた。


「じゃあさ、俺様の為に頑張ってよ。」
「え?」
「なまえちゃんと一緒に学校行きたい。だからさ、俺様の為に頑張ってよ。」


これなら頑張れる?
目を細めて、首を傾げて、佐助は笑った。
ねぇ、それってどういう意味?


「大丈夫だよ。俺様がお手伝いするから。」


呆けていたら進路希望票とシャーペンを取られ、気づけば第一志望には、私の意志を反した佐助の学校の名が刻まれた。
ああぁ、この希望票を元に、来週には進路相談があると言うのに。




無言実行

適当に過ごした高校3年間より、うんと努力した1年間があってもいいと思うんだよねぇ。

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