確かなもの。 この腕の中に広がる温もり。 不確かなもの。 想いの行方。 決してこの想いの終息を確信しているわけではないのだけれど、それでも何故だろう。 貴方を想うと私は悲しい。 ただこの肉体が邪魔で、どんなに手を伸ばしても貴方の想いに触れることができない。 できることなら、魂同士が触れ合えればいいのに。 でも残念ながら、私と貴方は人間と妖怪で、女と男。 私と飛影は死んでも他人で、1つになることなんて永遠にないのだけれど、でもそれが悔しくて、せめてできるだけ近くなれるようにと、私は飛影を強く抱き締めた。 「……おい、」 「なぁに?」 「苦しい馬鹿力。いい加減離せ。」 「嫌。」 ため息が聞こえたと思ったら、飛影を捕まえていた腕をあっさり解かれ、その腕を引かれて組みしかれてしまった。 飛影が私に覆い被さって、目の前には飛影が居て、 こうやって貴方を捉える事ができるなんて、私達は別々の個体なんだと、私はやっぱり悲しくなった。 「なんてツラさげてんだ。」 「…だって、」 ねぇ、どうしたら貴方に近づける? どうしたら貴方の想いに触れることができる? 「寝ろ。」ついさっきまで私の腕の中に収まっていたはずなのに、今度は私が飛影の腕の中に収まってしまった。 身体いっぱいに飛影を感じて、 飛影は確かに此処に居るのに、でも何故か飛影がどこか遠くに行ってしまうような。 そんな錯覚。 そんな自分が可笑しくて、少し笑って、 そして少し泣いた。 ふたりぼっち。 来世は貴方になりたい。 back |