凛とした切れ長の瞳に写る俺自身と目が合った。
そんな自分自身と見つめ合って数秒、自分が口づけられていることに漸く気付く。


「…!!」


自覚と共に突き飛ばした肩。
強く押したってのに、相手は何のことないかのように、少しよろけただけ。
俺より長身で、俺より細くて、俺より余裕に満ちた瞳。
俺は、こんな女を知らない。


「可愛い。」
「殺されたいのか、貴様。」


切れ長の瞳が、不意に細められた。
余裕に満ちた視線が、俺を見下ろす。


「本当に殺す気があるなら、私の首はとうに飛んでるわよ。」


上がった口角。
艶かしい唇から覗く真っ赤な舌。
この唇が、ついさっきまで俺の唇と重なっていたのか、と、らしくないことを考えてた。


「ねぇ、どうして殺さなかったの?」












「おーい!!」


意識が覚醒したのは馬鹿の声が聞こえたから。


「あれ?お前ら知り合いか?」


嗚呼この馬鹿はホントに場の空気を読めちゃいない。
誰がこんなアバズレ女と知り合いなもんか。
馬鹿に呆れ果て、女を睨み付けると、女はさっきの出来事などなかったかのように平然とし、俺には見せることのなかった優しげな視線をこの馬鹿―幽助―に向けていて、少なからず俺を不快にさせた。


「幽助くん、彼は?」
「ああ、コイツは飛影って言ってな、俺の仲間だ。」
「いつから貴様の仲間になった。」


んなこと言うなよ、馬鹿の戯言が聞こえたが、俺は無視する。
イラつく。
イラつく。
実に不快だ。
…何に対して?


「コイツはなまえって言って俺の学校でのダチだ。飛影お前仲良くしろよ。」


馬鹿の紹介を受けて女はまた俺に向き直る。
俺はなまえという女を直視せざるを得なかった。
何故なら、またあの余裕に満ちた、艶っぽい視線が俺を射抜いたから。
幽助に見られないように、女は口角を上げる。
欲情的な舌がチロチロと挑発し、俺は自分の唇を強く噛んだ。


「ハジメマシテ、飛影くん。」



秘め事

そいつは無遠慮にも、俺のナカに入ってきた、
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