彼はかなり情熱的な人だった。
それはベットの中だけの話ではなく、人柄として。
本人は隠しているつもりかもしれないけれど、何年来の付き合いである私には痛い程わかる。
いずれ彼のことだから、もっと大きなモノを求めるのだろうとずっと思っていた。


「明日、この星を出る。」


だから彼の言葉を聞い時、私はただ、ああ、その時が来たんだなと感じただけだった。


「ついて行かないわよ。」
「誰がついて来いっつったよ。」


ターレスはベットから下り、プロテクターを身につけだした。
私は、なくなった温もりを惜しむかのように、シーツをかき集めて丸くなった。


「私、明日から1週間お仕事なのよね」
「へぇ。」
「だからお見送りできない。」
「期待なんざしてないさ。」


その背中についていきたいかと問われれば答えはyes。
けれど、ついていってどうなるのだろう?
私は決して、貴方と同じ景色を観ることはできないわ。
貴方は計りきれない男だから。

ターレス、貴方、どこに行こうとしているの?


「…ねぇターレス、」
「ん?」
「キス……して。」


最後のおねだり。着替え終わったターレスは、何か思い詰めたように私を見た。
それも一瞬で、すぐにあのニヒルな笑顔を浮かべた。

私、貴方のそんな笑い方、好きだったな。


「たやすい御用だ。」


右手が私の顎を捕らえ、唇が触れる。
男性の、少しガサついた唇からこんな甘いキスができるのだから不思議よね。
その甘いキスに溺れたくて、名残惜しくて、私はせめて、ほんの少しだけ逃げるように、静かに目を閉じた。



最後のキスをして。

ほら、貴方が思い出に変わる、

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