『殺してください。』


そう彼に告げると、彼は私を強く抱き締めた。






「……話…聞いてた?」

「あぁ。」

「じゃあなんで抱き締めてるのよ。」

「うるせぇ。」

「私、生きてるのもう嫌なのよ。」

「うるせぇって。」







私を抱きとめる腕の力が強くなった。
ギシリと骨が軋んで、まだ生きてるってリアル。


私は臆病でクズで甘ったれで、生きるのがしんどい癖に死ぬ勇気もなくて。
こんなどうしようもない私が死ぬには誰かに殺されるしかないわけで。
バーダックになら、殺されてもいいって思った。


だから私は素直にお願いしたのに、普段、文句を言いながらもお願いを聞いてくれる彼が、こんな反応をするなんて、私、聞いてないわ。





「…ねぇバーダック、お願いよ。」

「……。」

「バーダック、」

「…俺が、殺してやる。」

「…。」

「俺が、テメェを、殺してやる。テメェが望んだ事だ。」

「…うん。」

「だから俺が殺すまで、勝手に死ぬな。殺されるな。」

「……。」

「俺がお前を殺す。だからそれまで、俺の好きにさせろ。」



すんっと、バーダックの鼻が鳴いた。
抱き締める腕は逞しくて、情けない。



「…なによ、それ。」


そっと腕に触れ、そのまま抱き返した。



どうやら私は、まだ生きてるようだ。





不器用にしか愛せない。


貴方に殺されるその日まで。



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