「光栄ね、私の事覚えてくれていたなんて。」
「お前…どうして……。」
「貴方を追いかけてきたのよ。」
再会とは、こんなにも呆気ないものなのか、と。
3年間苦しみ、会いたい一心でがむしゃらに探して、再会した時に歓喜は一体どんなものだろうかと期待に胸を膨らましていたのに、いざその瞬間になってみると私の3年間なんてどうでも良くて、喜びというよりもむしろ「え?これで終わり?」みたいな期待外れの脱力感の方が勝っていた。
そしてまた、目の前の人物がポートガス・D・エースだと認識できていない自分が居て。
まるで顔のない石像を見つめるかのように、ただそこに在る物体として見つめていた。
「なまえ…。」
ああ、そんな切ない顔をしないで。
貴方との再会が感動的なものになってしまうから。
つい先程まで顔のないただの石像だったのに、そんな表情をみせた途端、彫刻家の手によって命が与えられたかのように石像に顔ができ、その時初めてポートガス・D・エースだと確認したのだ。
確認ができると、私の中になんだか熱い塊ができ、その塊の熱が涙腺を刺激した。
視界はもう、貴方以外を捕らえる事が出来ず、皆真っ白で、その世界に貴方のオレンジはやたら映えて、居るとは確認できても、せっかくの再会を私の涙が滲ませ、先程まで見えていた貴方の表情までも確認させてくれなかった。
貴方は泣いているのかしら?
そして私はすぐ後悔をした。
何故冷静のままでいられなかったのかと。
感動はただ苦しめるだけの存在なのに。
そして私は、貴方を少し恨んだ。
どうして私の名を呼んだの?どうして忘れてくれなかったの?
もし忘れていたら、これが”再会”なんかじゃなかったら、感動なんてなかったのに。
他人でいられたら、どんなに楽だったか。
でももう無理なのだ。
貴方が私の名を呼んだ時点で、私達はもう他人にはなれないのだ。
涙腺が落ち着き、涙が引いてきて、再び貴方の顔を確認する事ができた。
どうしてそんな表情をするの?
貴方の無意識な犯罪に、私は少し笑った。
そして残念に思った。
もう少し、貴方の夢を見ていたかった。あんなに会いたかったのに、会った今となっては会いたくなかったと思う自分の矛盾さに呆れた。
もう無理だけど。もう遅いけど。
「ポートガス・D・エース」
会えてとても嬉しかった。そして、非常に残念だ。
「貴方の首を貰いに来ました。」
冷たい銃口は、暖かかった空気を一瞬で切り裂いた。
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