昔、太陽に憧れ、太陽を愛した人間が居た。
その人間は蝋で固めた偽の翼で空を飛んだ。
しかし、太陽に近づきすぎてしまった人間は、太陽の熱で自らの羽を焼き、地へと落ちてしまった。



and Icurus dreams of Apollon



何億何千もの人の居るこの世界で、1人の人間を見つけだすのがどれ程難しいか、確率計算しなくてもわかると思う。
しかし、その無謀な確率に賭ける人間が居た。
私もその1人なわけで、もう3年の月日を費やしていた。
今日もまた、地平線の彼方を見据え、世界の広さを理解させられ、
しかし、それに屈するのはこの3年の月日を無駄にしてしまうわけで、
私は賞金首のリストを片手に握り締め、約一ヶ月ぶりの地へと降り立った。


海の不安定さに慣れてしまうと、地の安定さが逆に気持ち悪い。
地震でもきてしまえばいいと思いながら、町中の手ごろな酒場へ足を運んだ。

「お客さん、開店は4時からですよ。」
この店のマスターらしき男性は、今日仕入れたばかりであろう酒のボトルをラックにしまっているところだった。
「すみません。人を探してまして…。この人をこの町で見かけませんでしたか?」
握り締めていたリストをマスターにみせると、マスターの顔色が少しくすんだ。

「ああ、コイツなら昨日この店に来たよ。」
「本当ですか!?」
直感が当たったのか、島に入って最初の店の有力情報に私は声が裏返った。
今まで彼方に居た人物がすぐ傍まで近づいて来たのだ。
「昨日この島に来たらしくてな。この島はログが溜まるのに3日はかかるから、まだこの島に居ると思うぞ。」
「ソノ人は何か言っていませんでしたか?」
「あー…。ソイツにもな、『コイツを見かけなかったか?』って聞かれてな、その後『この町に武器屋か何か、そういう類の店はないか』って聞かれたよ。」
「武器屋…?」
「なんでもナイフの調子が悪いらしくてな。昨日店に来たのが夜中近くだったから、多分今日向かってるんじゃないかな?」
「その店は何処にあるんですか!?」

「海伝いに南へ行ったところだよ。しかしお嬢ちゃん……「ありがとうございます!!」

マスターは持っている情報を全て話し終えた後、私に何か言おうとしてたが、ソレを強制的に塞いだ。
この店に居る理由がなくなり、マスターの何か言いたげな視線を背中に感じながら、私は店を出て、南へと走った。



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