誰もが知っている事実だと思うので
今更改めて言うのも何だが、
この世の中というのは下手したら地獄以上に残酷で
そんな中、
いくら不幸を言い争っても何の自慢にもならないが、
今目の前には不幸な女の子が居た。
empty body
「アンタ大丈夫か?」
それはホント日常的で、
たまたま着いた町で
たまたま入った店で
当たり前のように食い逃げして
当たり前のように路地裏に逃げて
当たり前のように暴行を見かけて
当たり前のように助けただけ。
助けた相手は当然女の子なワケで、
引き裂かれた衣服も
傷だらけの手足も
もはやこの世の中では見慣れてしまっている。
ただ1つ違った事と言えば、
コイツがウンともスンとも言わなかっただけだ。
「どうして助けを呼んだりしなかったんだ?」
「別に意味がないから。」
ソイツは服が破れてしまっていることなど気にする事なく、まっすぐに俺の顔を見据えて、そう吐いた。
「まぁ…なんつーか…確かによ、誰も怖がって関わりたくないって思うかもしんないケドさ、でも…「相手がお兄さんに変わるだけだよ。」
ここで話の食い違いに気がつく。
てっきり、誰も見て見ぬフリの大人の現状に嘆いているのかと思ったが、俺を見つめるその瞳には、何故か悲しみは見かけられなかった。
「…どういう意味だ?」
「お兄さんが代わりに抱いてくれるんでしょう?」
あー、
そういう事デスカ。
「ワリーな。俺はロリコンの趣味はないし、第一金がねぇんだ。」
「お金は別にどっちでもいい。」
「あーん?」
またもここで疑問符が浮かぶ。
「何だ、娼婦じゃねぇのか?」
「んー…たまにお金もらう…でもお金はどっちでもいい。」
なんだそのテキトー加減。
「ヲイヲイ、商売すんならもうちとキッチリしといた方がいいんじゃねーか?じゃないと喰われっぱなしになるぜ?」
「でも男の人ってソウイウノ好きなんでしょ?」
「んー…まぁ…男の性ってヤツを否定しきれねぇのはちと情けねーけどよ。」
なぁーに言ってんだ俺。
「…それに、」
「ん?」
「抱いてる時、皆よそ見しないから好き。」
「……。」
なんとなく、さっきの状況とコイツの言いたい事がわかってきた。
さっきから俺を見つめる目に悲しみのカケラも見えないのは、
それどころか何も掴めないのは、
コイツ自体が空っぽだからだ。
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