人々はそれを運命だと嘆くのだ、と。

Lament


「何故戦う?」

背に髑髏を背負う青年が問いかける。
その表情はつい先刻程前の穏やかさを微塵にも感じさせず、少女を確かに動揺させていた。

「我が理想のため。」

しかし、少女も負けない。
いかなる理由であろうと、今目の前に立つ青年は確かに自分が最も憎むべき対象である海賊であるからだ。


「どうして戦う?」

背に正義を背負う少女は問いかける。
その表情はつい先刻程前とは違う軍人の顔つきになってい、この青年をどこか満足させていた。

「己の野望のためだ。」


「貴方方の言う野望が私には許せない。」
「いかなる理由であろうと、俺の前に立ちはだかるなら容赦はしないぜ?」

双方とも譲らない。
それもそのはずである。
たとえ敵対する相手であろうと、形は違えど、己の信念に基づいて行動をしているのはお互い様である。
相手の心意気を理解しているし、又、己の信念を曲げてしまう程屈辱的な事はない事ぐらい、双方理解していた。
だからこそここで屈するわけにはいかないのである。
己の為にも。相手の為にも。


少女は意を決したかのようにサーベルを抜き、刃先を青年に向け構える。
青年もまた、いつもどおりのスタイルのまま、いつ少女が仕掛けてきてもいいようにと密かに構える。

長い沈黙…。


青年は己のあまりの冷静さに困惑していた。
何故こんなにも冷静なのかと。
ただ脳内には考え一つ浮かばず、少女の向ける刃先を凝視していた。

少女は己の疑念に困惑していた。
何故この男を斬る事に躊躇がいるのかと。
その答えが見えず、ただただ少女を焦らすばかりである。
しかし、そのような心境を相手に悟らすまいと、自らに強い暗示をかけ、無理矢理掻き消していた。

頬を伝う汗だけが妙に冷静だった。



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