「…馬鹿野郎……っ」

そう言うと、左肩に背負ってたリュックを下ろし、テンガロンハットを深く被り直した。

馬鹿野郎だなんて、そんな言葉で片付けないで。
私は苦汁の選択をしたの。そして決心したの。

一目会えればそれで十分だと腹をくくって、再会を素直に喜ぶ事も、貴方に笑いかける事も、貴方の胸に飛び込む事も、私は犠牲にしたの。
貴方はその決断が間違っていたと言うの?
あのまま、自分の島で貴方を待ち続けていた方がよかったなんて言うの?
貴方が帰ってくる保障はないのに?
さよならも言わない貴方なのに?

言いたい事が山ほど出てきて、喉のすぐ近くまで出てきたけど、私はソレを飲み込んだ。

やめておこう。
もうこれ以上、未練を残してはいけない。
自分で決めた事なのだから。


風が、私達を静かに撫でて行った。
それが気持ちいいなんて、他人事のように考えていた。


これが片想いならよかったのに。


あんなに決心したのに、決断したのに、いざその場になると未練が出てくるなんて、私はまだ甘ったれた町娘だ。
でも、最後は海賊にならなくてはいけない。ならなくてはいけない、のだ。

深く被ったテンガロンハットが、私に表情を見せなくして、それが嬉しくもあり、もどかしかった。


貴方は立派な海賊だから、私の事などすぐに乗り越えられるでしょう。
それでいい。私の事なんて忘れてくれていい。
そしたら心残りなんてなくなるから。

太陽のような貴方、きっと多くの人が貴方に魅了され、憧れるでしょう。
でも貴方はそんな事には目もくれず、さらなる高みへと目指すでしょう。
その障害になるつもりはない。だから忘れて下さい。

ただやっぱり最後に、貴方の顔が見れないのが残念です。今更だけど。



太陽のような貴方、そんな貴方が大好きでした。




「さよなら、エース。」










銃声は空を裂き、炎が大地を覆った。










アポロンが、イカロスの羽を焼いた。





そしてイカロスアポロンの夢を見る










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