リメイクver | ナノ




 いやぁ、まさかさ。


「さっさと歩けやクソジジイ。足ひっぱんじゃねぇ!」
「ちょ、誰!? 真也だよね!? お父さんに何て口をごふっ!」


 平城と父親がこんなにも仲が悪いとは思わなかった。
 今回は極々普通、といっても障害物がある親子リレーだった。平城はなんであんなに仲が悪いのに出場する気になったんだろうか。現在お父さんこけても気にせず走ってるし。裏人格だし。
 対称的に、水無月高校のチームは神がかり的なコミュニケーション能力を発揮していた。まず、全種目に出場すると宣言した強者の水無月高校の冷泉紫苑。
 その父親の顔が、冷泉紫苑と瓜二つ。いや、冷泉紫苑に色気が追加されたような容貌だった。冷泉父がスタートラインに立った瞬間、騒がしかった観客者が一瞬、息をのんだほどに。
 その二人がずば抜けて顔が良かったのだが、平城親子も負けていない。平城や平城父はお互い、身長も凄く高くて浮世離れしている。

 とにかく絵になる二チームがスタートダッシュを始めて、会場の女子の声援が凄いことになった。もうコンサート並みだ。大方冷泉家の応援だろうが、混じって平城を応援する女子もいる。なんだ、やっぱりモテるんじゃないか。


 モヤモヤとした心中を抑えながら、じっと何も応援せずに平城親子を見てる。確実に五回は真也と目があったな……。早く終わらせたいのか、かなり焦ってる。

 平城親子が一番最初の紙を広げた。どうやら親が子に、子が親をちゃんと理解しているかの問題があって、正解するまで問題を続けるらしい。ちなみに問題は。


『冷泉選手! お父さんの趣味は知っていますか?』
『〇〇〇』
『正解!』


 会場が一瞬、静まった。
 女の子は我をと冷泉父にアピールするも、父はニコニコと手を振るだけ。男子は羨ましいと(特に内藤が)血の涙を流していた。ちなみに情報源は田貫さんなので、間違いはない。プライバシーの問題になるだけだ。


『じゃあお父さん。お子さんの下僕は誰かわかりますか?』
『んー…あみちゃん?』
『正解です!!』


 とある女子の悲鳴が木霊した。簡単にクリアした冷泉親子は二人三脚でゴールまで突っ走る。あれ……陸上部並みだぞ……二人三脚だろ……?
 そうこうしてる間に、やっと平城親子が問題コーナーにたどり着いた。


『では平城選手! お父さんの趣味は、』
『母の盗聴観察!』
『正解!』


 また引かれてる。今度は怒声が聞こえるが、まぁいいだろう。
 起き上がった擦り傷だらけの平城父が、問題を答える。


『お子さんの〇〇〇のオカズはなんですか!?』


 さっきから、なんで一部はセクハラになってんだよ。
 望月先輩もテントの下で暴れてた。そして、質問してる隣では出雲先輩がハァハァと息を荒くしてる。ああ、あの人の仕業か。


『ナニって、ショートヘアの女の子の写し』
『ぎゃああああああああああああああ!! 何答えようとしてんだクソオヤジがぁああああ!! つか何時見やがった!?』
『そりゃ、ベッドの下にあんなに』
『ちょ、平城選手落ち着いてください!! 今はレース中で!』
『てんめぇええええええ!! まだ盗聴してんのかクソ正太がぁああああああ!!』
『母さんストップ! 風来さんに怒られるよおおおおお!!』


 途中で平城母に平城姉参戦。しばらくの間、家族戦争というものを目の辺りにした。
 ちなみに冷泉選手はぶっちぎり一位。平城家はぶっちぎりビリだった。