リメイクver | ナノ




 月日が流れるものはあっという間で、とうとう明日には合同体育祭だ。
 今郷高校は妙に浮き足立っていた。特に女子が。なんでも水無月高校の生徒会長にその付き添いできた銀髪の男がえらく美形だったらしい。ウチの学校にもイケメンがいるのに関わらずそちらに行くとは……まぁ、ウチの銀髪は一言目には「死ね」だし、茶髪はビビられてるし、保険医は変態だからなぁ。


「明日だね、体育祭! 楽しみだなぁ……!!」
「…………雨、降ればいいのに」


 しかし、この温度差はなんだろうか。平城と早乙女、どちらも運動が苦手らしい。早乙女はともかく平城は意外だったが、力加減ができないから、球技に至っては役立たずらしい。
 二人の様子に苦笑しながら、テントを組み立てていたら、男子の野太い声が校庭に響いた。そちら側では豪華な椅子に腰かけたさらさらの茶髪の美女が筋肉質の男達に指示している。


「……なにあれ? 主人と下僕みたい」
「強ち間違っちゃいないよ。あれは桜木風葵さんだ」
「桜木?」
「うん。金持ちのお嬢様って噂もあるけど……今のとこ確実なのは、あの人のファンクラブが凄まじいことだけ」


 にしても、水無月高校のメンツは凄いな。
 まずは現在女子の手持ちの荷物を「レディーにはこんな汚れたものより俺の手を握って欲しい」なんて言っている遠野刹那。確か、イタリアのボスとかなんとか。情報源は茶藤だから確実性はない。
 そして冷泉紫苑。水無月高校の生徒会長にして冷泉家の跡取り息子だろう。冷泉家だと水無月高校の生徒に聞いた時は驚いたが、でも心の奥底でやっぱりと思った。あそこまで綺麗な顔立ちな人間は、変態保険医のまともな時くらいだ。
 そしてその男に引きずられてる濃い茶髪をした美少女は私でなくても知るものはいる超有名モデルの九条あみ。
 余談だが、冷泉家には「絶対者」という異名を持つ男がいるとか。意味は分からない。まぁ何かが絶対的なんだろ。
 
 今年の今郷町のメンツは男女関係なく、その美男美女にお近づきになろうと必死になりつつあるのだ。顔が整ってるのは大変だなぁと思ってると、頬っぺたが軽くつねられた。


「田村さん。何処見てるの?」


 頬を膨らませた平城の視線が合い、自分でもびっくりするくらい心臓が高鳴った。
 平城は我に返ったように頬から手を離して、うつむいてしまう。つねられたからか、右頬が熱い。


「……いや、水無月高校の生徒は凄いなぁって」
「(余所見なんて出来ねぇように縛る。変われ)
(いやいやいや、何考えてるの!? 君に田村さんを好きにさせるわけないでしょ!?)」


 下唇を噛んで、地面をじっと見詰めてる平城。早乙女ははぁと大きくため息をついて作業にとりかかる。


「あ、すみません。ここはこうでいいですか?」
「……え。ああ、そうだよ」


 早乙女に質問した可愛らしい女の子は、ありがとうございますと一礼して立ち去っていく。しかし……。


「なんで、男子用のジャージ着てんだろ」


 最近の子どもの性別が、よく分からない。