最果てよりお届け物です
自分の記憶が確かなら、今日の放課後は風葵と二人でケーキバイキングに行くのではなかったか。
「ハロー、あみ!相変わらず可愛いな」
「…なんでいるの、刹那」
放課後、待ち合わせ場所である校門に来てみれば、なぜか刹那がいた。
風葵の姿はまだ見えない。
きらきらとした銀髪が太陽の光に照らされて、不覚にも綺麗だと思ってしまった。
だがしかし、何でいる。
「んー?風葵が、俺も一緒にどう?って言うからさ!可愛い風葵からのお誘いを、俺が断るわけないだろ」
「あーそー…」
聞いた自分が馬鹿だった。
この遠野刹那という男はとにかく無類の女好きで、女子からのお誘いにはほいほいと付いていく。
よって、美少女である風葵からの誘いを断るわけがなかった。
「あ、あみちゃーん!刹那ー!」
「風葵…」
「やっほー、風葵嬢。お誘い感謝するぜ?」
呆れて溜息をついていると、ようやく風葵がやってきた。
隣でひらひらと手を振っているナンパ男は、この際無視でいこう。
きゃいきゃいと盛り上がる二人は傍目にも仲睦まじげだが、物凄い視線を集めていることはスルーなのか。
いい加減周りの視線が鬱陶しくなってきたあみは、嘆息しながら二人に向き直った。
「風葵、刹那、行くなら早くしてくれない?」
「あぁ、悪い悪い」
「じゃ…行きましょ!」
三人で並んで、道を歩く。
モデルの九条あみだとばれないようにサングラスをかけて往来を歩いた。
相変わらず人通りの激しい通りを、他愛のない話をしながら通り抜け、目的のカフェへと足を進める。
いるだけで騒ぎを巻き起こす二人ではあるが、愉快な友人なのである。
そんなことを思っているあみは、自分もトラブルメーカーの一人なのだと本気で気付いていなかった。