青い空の下で君と踊る
この学校には、とにかく人目を引く容姿の持ち主が何人もいる。
あみ自身もモデルという職業に就いている身であるから、もちろんその括りに入るのだが、目の前の馬鹿みたいなやりとりを至極真面目に行っているこの馬鹿共もその括りなのだと認めるには相当の諦めと寛大な心が必要だったと思わざるを得ない。
「だからさ、俺はやっぱり、縦長でいくべきだと思うんだ」
目の前の男、遠野刹那。
どこかの小説に出てくるような、典型的な学園の王子様だ。
銀色の髪に、サファイアとアメジストを埋め込んだかのようなきらきらと輝く色違いの瞳。いわゆる、オッドアイというやつだ。
特異な色彩は、だがしかし周りに好奇の視線で見られることはなく、むしろ美点として認められていた。
軟派な性格もあいあまって、彼には友人が多い。
屈託の無いその笑みには、どこか毒気を抜かれてしまう。
…時々馬鹿なことを仕出かす点を除いて。
「うーん…横の方がバランスがよくない?倒れたら元も子も無いよ」
その隣にちょこんと座っているのは、皇琥珀。
顔立ちが整っているというよりは、男のくせに可愛らしく愛嬌のある顔をしている。
琥珀、という名前の通り、ふわふわとした琥珀色の髪と瞳が、また甘やかな雰囲気に一役買っている。
座り方まで、そこらの女子より可愛らしいとはどういうことだ。
とはいえ、男の娘というわけではなく、きちんと男らしい一面も持っている。
たまに発言が誰より男らしい。
そんな二人が休み時間に何をしているのかといえば、何のことはない。
ただのドミノ倒しだ。
ただ、普通のドミノではなく、技術室からこっそり持ち出してきたらしい木屑を使っているので、並べ方にも一工夫しなくてはならない。
何度か並べて、それが倒れるの繰り返しであるらしく、意地になった二人が真剣に議論し始めた。
アホの代名詞のような光景だが、クラスの人気者である刹那の行動にクラスメイト達が反応しないわけがない。
少しずつ人が集まって、ついにクラス全員でのドミノ大会が始まってしまった。
流されて、あみまで真剣に木屑を並べている。
「ちょっと刹那!何そこ倒してんの!」
「ちょ、そう言うあみこそ危な…っああ―!」
「やっちゃった…」
「琥珀くん、これ何処置く?」
「あ、それはこっちかな」
「…お前ら、授業は?」
五分遅れで教室にやってきた先生が、その異様な光景に盛大に嘆息した。