生きる意味を知っていますか



完全に破壊神となった平城真也が、来た。

先ほど彼の異常性を痛感させられたあみは、それでも彼を睨みつける。負けるわけには、いかないのだ。彼にとって田村沙弥という存在が唯一で絶対であるように、自分にとっても、家族は誰よりも大切なもの。
自分だって、弱い存在では決してない。それでも、どれほど力を持っていたとしても、個人で組織に立ち向かえる存在なんて、数えるくらいのものだろう。力だけでは、立ち向かえない。結局権力というものがものを言うのか、と空しくなりながらも、平城が田村沙弥を攫えないように、彼女を更に強固な檻で閉じ込め、臨戦態勢を整える。

黒崎リュウが、来るまで。自分は、そこまで持ちこたえればいいのだ。
後は、あの男の刺客である黒崎が何とかしてくれる。悔しいが、彼の実力は認めていた。唯一絶対の存在のために何でもするというその存在意義は、案外目の前の平城真也と似ているかもしれない。
さぁ、戦おう。己の存在意義をかけた、戦いで。


「…貴方には、わからないでしょうね」
だからあたしを、悪と呼ぶのでしょう?

「うっせぇ…いいから返せよ!!」


戦いが、始まった。








「…おー、なんか派手にやってんなぁ」

まだ平城によって破壊されていなかった倉庫の上で、二人の戦いを見守っていた黒崎リュウは、そう呑気に呟いた。
引き取りに来たはいいのだが、凄まじい攻防戦を繰り広げている真っ最中であったため、入るに入れなかったのだ。
あみは先ほど、黒崎の能力を認めているとは言ったが、彼の能力はどちらかと言うと心理戦に使うもので、あんな中に飛び込んでいって無傷で済むような代物では、決してない。もちろん、戦闘においてもかなり有力であるのだが、いかんせんレベルが違いすぎた。

「…あんな化け物操れって?ハッ、無理無理」

お手上げだ、と、両手を高く上げる。一つのことにしか意識が向いていない状態はある意味付け込みやすかったりもするのだが、彼の思考はそもそも、そんな次元すら凌駕していた。平城真也の脳内を埋めるのは、田村沙弥ただ一人で、他の何かが入り込める余地はまるでないのである。
仕方ないか、と、地面に降り立つと、こっそりと裏側に回り、二人の戦いから少し離れた場所にいる沙弥の檻にそっと近づく。もちろん、平城の嗅覚に引っ掛からないよう、十分な距離は保って。
そして、そっと沙弥の意識に干渉した。ゆっくり、ゆっくりと、彼女の中心部分を手中に収めていく。そして、完全に操れるようになったと思ったところで。




「…何してる?」
「っ…!」


もう一人の破壊神が、降臨した。