※ ほぼ会話文
※ 捏造設定有り




 取り立てを粗方終わらせて夜の街をフラついていた時、隣を歩いていたトムさんが唐突に話し掛けてきた。

「そう言えば静雄さ、お前って中学のとき受験勉強したか?」

「……唐突っすね。いきなりどうしたんですか?」

「いや、今通り過ぎた学生が受験の話してたからよ」

「ああ、何かしてましたね。……俺は、確か多少は勉強してたと思います」

「お。偉いな」

「そうでもないっすよ。本当に多少だったし……」

「静雄って成績良かったのか?」

「良くて中の上でした」

「良い方じゃねぇか。でも、何で来神に──」

 トムさんが何かを言いかけた時、俺の後ろから衝突してきた何かによってその言葉は遮られた。

「シーズちゃんッ!」

「!」

「仕事終わったの?」

 後ろから勢いよく俺に抱き着いてきたのは、相変わらず黒いフード付きのコートを身に纏った華奢な男。

「……また性懲りもなく俺の前に現れやがって、手前は一体何考えてやがんだ?ああ?」

「分かってる癖に。俺はいつもシズちゃんの事しか考えてないよ」

「……きもい」

「失礼なこと言わないでくれる?」

「あー……、静雄。今日はもう上がって良いぞ」

「え、良いんっすか?」

「あ、まだ仕事終わってなかったんだ。ってことは俺邪魔だった?いやぁ、だってシズちゃん見つけたら思わず抱き着きたくなっちゃったんだよねえ」

「手前は少し黙れ。……で、トムさん。本当に大丈夫っすか?」

「おう、大丈夫だ。あとは回収した金を持って帰るだけだしな」

「何かすんません……」

「気にするな。じゃあ、また明日な」

「お疲れ様っす」

 俺がトムさんに頭を下げている間も、臨也は俺に抱き着いたまま離れることは無かった。

「……おい、いい加減離れやがれノミ蟲」

「だから、俺はノミ蟲なんかじゃないってば。何回言ったら覚えるの?学習能力ある?ってか、俺がノミ蟲だったらシズちゃんは何なのさ。ダニ?」

「うぜぇ黙れ死ね」

「俺が死んだらシズちゃん悲しむでしょ?」

「…………別に」

「そう。じゃあ、その間は何かな?想像して悲しくなった?」

「チッ」

「ははっ、シズちゃんってば可愛いねえ」

「ああ!?」

「何でもないよ」

 俺の隣まで来て歩き始めた臨也を見て、仕方なく俺も臨也に並んで歩くことにした。

「で、高校受験の話だっけ?」

「……盗み聞きしてたのか」

「人聞き悪いこと言わないでよ、たまたま聞こえただけだからね?」

「嘘くせぇ……」

「高校受験はさ、俺も少ししか勉強してなかった気がするよ。何て言っても面倒だったし、俺の場合第一志望校には受かる自信があったからね」

「嫌みかよ」

「そんなつもりで言ったんじゃないんだけど……。と言うか、シズちゃんも第一志望校に受かったんじゃないの?」

「いや、俺は出来ればトムさんと同じ高校に行きたかった」

「え。じゃあ、来神は第一志望じゃなかったの?」

「ああ。第一志望はトムさんと同じ高校だったんだが、成績が足りなかったから仕方なく来神にした」

「ふーん……」

「……何だよ」

「別に?……あ。もしかしてさ、シズちゃんって入試前夜とか緊張する人?」

「だったら何だ」

「あははっ!シズちゃんってやっぱり可愛いね!」

「殴り飛ばすぞ」

「それは勘弁して欲しいかな。でもさ、俺は緊張なんてしなかったよ?」

「……ムカつく」

「まぁまぁ。じゃあさ、入試前夜にカツ丼とか食べたりした?」

「……何か食べた気もするけど、あんま覚えてねぇな」

「もし食べてたなら本当にベタだよね。……で、いきなり話は変わるけどさ。俺、何か最近来神受けて良かったなとか思うんだよね」

「あ?」

「だって、来神に入学してなかったらシズちゃんに会えなかったでしょ?こうやって池袋の街を並んで歩くことも無かっただろうし、もしかしたら一生出会えなかったかも知れない」

「…………」

「だからさ、俺は来神を受けて良かったなって思うよ。シズちゃんは?」

「……さぁな」

「そこはさ、俺もお前に会えたから来神受けて良かったと思ってる、とか言えないの?」

「あ、門田だ」

「ドタチン?あ、本当だ。……って違う違う、話逸らさないでよ」

「またあの変な奴らと一緒なんだな」

「そうだね。ってか、シズちゃん俺の話聞いてる?」

「おーい、門田ぁ!」

「え、ちょ、シズちゃん!?置いて行かないでよ!!」

 見つけた門田の方へ早足に歩き出した俺を見た臨也は、慌てて俺の後を追って駆け寄ってきた。


 ──確かに高校入学当初は臨也のことなんて大嫌いだったが、今はそうでもない。

 だから、臨也があんな風に思ってるなら、俺も同じように思っててやっても良いかとも思う。

 まぁ、直接は言ってやらねぇけどな。






20100501~


バカップルシリーズ

title by 確かに恋だった






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