※武術同好会お借りしております。

きらきら、きらきら

空が青い。晴天だ。今日は週一の部活なので空の色以上に心が軽い。言い回しが微妙だけど、本当に。

週一しか活動していないのに加えて活動内容がDVD鑑賞となっているのでだいぶ馬鹿にされているのが武術同好会だ。そんなんだからいつまでも同好会なんだと良く言われる。クロエ先輩が部費についての会議で散々に言われて帰ってくる。それでも、俺はこの感じが気に入っているのだ。すごく居心地がいい。

がらがらと引き戸を開けると中にはクロエ先輩しかいなかった。

「あ、きたきた。うのくん。」
「こんにちはー。あれ、まだ一人ですか」
「うん、オルくんまだきてないよ」

そうですか。と何気ない会話をしながら鞄を長机に置いて先輩に近寄った。

「今日は何見るんですか?」
「今日はねーラピュタ」
「おおー!いいですねー」
「でしょ?ノイが貸したくれたのー」

ふんふんっと挿入歌を歌いながらDVDを取り出した。ラピュタは見たことあるけど久しぶりーなんて途中で挟みながら先輩がDVDデッキにおいた、そのタイミングで。

「せんぱーい!あっうのもいる!こんにちは!」

オルがどたどたと部室に入ってきた。なにやら楽しそうに目をらんらんと輝かせている。

「オルくんー今日はねーラピュタでね」

先輩も楽しそうだ。心は完全にジブリな感じだ。俺もジブリに引っ張られている。ラピュタ、ラピュタ。

「ラピュタですか!いいですね!それも!でもそれよりも季節にのりましょう!短冊!かきましょ!」
「え?」

オルが扉を指さしながらちょっとドヤ顔をした。驚いたように俺と先輩が目をやると扉のところに笹がかかっていた。結構大きい。どうやって運んできたんだろう。

深緑の葉っぱが綺麗に窓から入る光を受けて光っている。

「昨日帰るときに科学部のところとおったら科学部が短冊してて!羨ましくなったんで笹分けてもらってきました!プラントケア部に!」
「う、うん?」
「短冊も作ってきました!かきましょ!」
「でも…ラピュタ…」
「来週にしましょ!」
「でも…」
「来週美味しいクッキー買ってきます」
「わかった」

先輩が完全に食べ物に釣られたのが見えた。突っ込むところが多すぎる。オルは行動力ありすぎだし先輩は意思弱すぎ。

でもまあこの感じが気に入っているのだ。好きなのだ。楽しい。騒がしすぎず静かすぎず。





それからあれよあれよとのりのりなオルに短冊とペンを渡されて机に座らされた。先輩も隣にストんと腰を落とすと早速ペンを動かしている。だいぶ乗り気だ。

オルに至ってはいつ書いたのかすでに『もてたい!』と大きく書いたピンクの短冊を握り締めて笹の立てかける位置を調整している。はやいはやい。


「先輩なんて書くんですかー?」
「えっ?」
「いや、これですよ。短冊」
「ああ、『化粧が上手になりますように』?」
「そうですか…」

「今のままでも十分だと思いますけど」と小声で付け足すとにやっと笑ってありがとと受け流された。

先輩のくるんとした髪の毛に光が当たっている。すこし反射するのが眩しい。

「うの!はやくはやく!!短冊!!一番うえに飾ってやるよ!」
「わかったわかった。まって」

オルに急かされて自分の薄い黄色の短冊を眺めると俺も書こうとペンをとった。


なんて書こうか。とりあえずは『楽しく現状維持』かなぁ。なんて、すこし後ろ向きなことを考えながらまだまだ明るい空を仰いだ。

fin
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