名前はスマートフォン片手にため息をついていた。名前の働いている店はハコデリともソープとも呼ばれる風俗店である。もちろん合法、なはずだ。
今日は最悪な日だ。待機所と呼ばれる狭い部屋の中で名前は心の中で思っていた。ほかの女の子はみんな店に来た男性にご奉仕していることであろう。ひとりになっているということはつまり、この店では名前はそこまで人気ではないということになる。スマートフォンには友達からしか連絡が来ない。この店で仲良くなった男性からは何も来ていない状態である。じぶんのサービスが悪いというわけではない。きちんとマニュアル通りこなして、一通りの雑談をして、仕事でストレスをためている男性たちを精一杯奉仕しているつもりではある。しかし、何かが足りないのであろう。名前にもう一度奉仕してもらおうと考える人は少ないのである。
理由は圧倒的な経験不足であろう。
容姿はなかなかいい方ではある。男性も二十代もいるが、大抵は三十、四十代が多い。たまに六十はゆうに過ぎているであろうという人まで現れる。自分よりもひと回りもふた回りも上な人と、本来ならば愛し合う者がおこなう行為をしなければならないのは苦痛ではあるが、名前は一生懸命頑張っていた。

「やっぱ向いてないのかなあ」

名前は二十歳になったばかりである。彼氏がいたのはたったの一回。特に良い思い出も悪い思い出もないが、自然消滅したからしょうがないと割り切っていた。恋愛経験が一度しかないのであれば、夜の営みもその人としかしたことが無いわけで、他の人とも経験があったら別なのだろうが、彼女は男性の喜ぶ行動をイマイチ理解できないでいた。
二回目のため息を吐いた時、カウンターにいた店長から声がかかる。
まあ、わたししかいないしな。待つのが面倒だったのだろう。名前は三回目のため息をついて、重い腰を上げた。






20181130






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