それは単なる思いつきだった。


ある日、授業はわからないし飽きたし眠いしで暇を持て余した私の目についたのはなぜか机から出てきた学級便りの紙だった。印刷ミスかなんなのか裏は真っ白で、とりあえず私はそれで紙飛行機を作った。しかし少し考えてから、これじゃつまんね!と思い直し、一度紙を広げてそれからその辺にあったボールペンで文章を書いた。そしてもう一度折り直し、何を考えたか窓から思いっきり飛ばしたのだった。
先生からは怒られたけど、いい感じに風に乗って飛んでいった気がする。
その紙飛行機に何を書いたのかはっきりとは覚えてていない。多分どうでもいいことだ。しかしただひとつ、返事をくれる優しい人がいるならと、手紙を置く場所だけ書いたことは覚えている。
自宅から学校までの道の途中の茂みの、小さなうさぎの置物があるところだ。
隅っこだからか誰も気づかない。こんなに可愛いのに。
だから手紙を返してくれるような優しい人にはこれを教えてあげようと思ったのだ、多分。

そして今、朝は何も無かったはずのそこには白い綺麗な封筒がそっと置いてあった。
見つけた瞬間、私は跳びはねそうなほどドキリとした。
私の手紙を拾った誰かが、それを読んだのだ。そして私が書いた場所に返事をくれた。きっとそうだ。

いたずらだったらどうしよう、と少しの不安を抱いて私はそこに近寄る。
封筒を手に取り、折れないようにポケットに大事に入れて私は走り出した。早く早く!

家に入って靴も揃えずに自分の部屋に飛び込む。鞄を投げ出してベッドに座り、ポケットから封筒を取り出した。なんだか開けるのがもったいな気がしたけど、手紙は読むものだ。
ドキドキしながら封を切ると、同じ白い便箋が一枚入っていた。
開いてみると、流し気味の綺麗な字が連なっている。
封筒もシンプルだし、これをくれた人は男の人なのかもしれない。
ゆっくりと、私は文面に目を走らせた。




紙飛行機を拾いました。なんとなく広げたら手紙になっていて驚いたけど、素敵な考えだと思う。

俺も学生です。
学校は楽しいよ。部活をしていて、メンバーの個性が強くて大変だけど。
退屈なら部活に入ってみたらいいんじゃないかな。運動部でも文化部でも、興味が持てれば楽しいと思うから。
それから、手紙、続けてもいいかな。おもしろいと思ったんだ、こういうの。
人に向けて文章を書くってあまりしないから。
よければまたウサギの所に。

それじゃあ。




これを読むと、私はそうとうくだらないことを書いて飛ばしたんだなと思った。学校つまんないとか書いたに違いない。
そんな手紙にこんな真面目な返事をくれるなんて。それに、うさぎの所も知っていたみたいだ。小さなことにも気づけるいい人だ、きっと。

手紙の端には、アルファベットでSと書いてあった。
え、サド?
一瞬思ったけど普通に考えてイニシャルだろう。名前かな、苗字かな。

早く返事を書きたかったけど、こんなにソワソワしてたらまともな文が書けないと思った。
今度はちゃんと書きたいな。
学校で空き時間にでも書こうと、私はレターセットを引っ張り出して鞄に入れた。



110404




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