視線を感じるとかどんな感じだろうわかんない、って思ってたんだけど今わかった。
穴が空きそうだ。


「………」
「…な、何」
「………」
「………」
「………」
「な、な、何って言ってるでしょうが!!」
「あ痛っ」


ついに耐え切れなくなって財前の頭にチョップを食らわせてしまった。
睨まれた。


「…何すか」
「おま、それは私の台詞だろ」
「だから何すか」
「私の顔何かついてますか」
「いや、別に」
「じゃあそんな見ないでよ、怖いから」


なんか恨みでもあるのかと思うじゃんね。
財前は私から目を逸らしてため息をつき、また私の顔を見てから首をかしげて、もう一回ため息をついた。


「おまえ……!」
「ああ、すんませんつい」
「ついってなんだついって!」
「ついはついです」
「そんな凝視して…はっ、まさか財前私のこと!」
「殴りますよ先輩」
「だよねー」
「それは俺とちゃうと思います」
「だよねー…ってはい?」
「あ、いや、ちが」
「?」
「と、ところで名前先輩、部長のことどう思うてます?」


財前はちょっとどもり気味に言った。なんだ。
っていうかなぜ白石。


「いや、特に何も」
「じゃあ、部長からどう思われてると思いますか」
「え、そんなの知るか」
「…そっすよね」
「なんでなんで」
「理由はないです」
「は、何それ。財前は知ってんの」
「…多分」
「はああ?」
「先輩うっさいっすわ。俺もう行くんで」
「ちょっと待て財前!あ、なんかこれデジャ……ぶっ」
「っと、」


財前を追おうとドアから飛び出たところ、何かに鼻をぶつけてしまった。鼻曲がる…!
見上げると、白石がびっくりした顔で私を見ていた。


「あ、ごめん白石」
「どないしたん」
「財前を追いに行こうと…」
「は、なんで財前?」
「いやあ色々あって」
「…へー」
「というわけでちょっと」
「おん」


白石を通りすぎて行こうとすると、そんな返事と一緒に手が伸びてきて私の腕を掴んだ。
勢いづいていた私はその勢いでのけ反る。


「………」
「………」
「というわけでちょっと」
「おん」
「…いやいや離そうよ」
「ん?」
「ん、じゃなくて。手」
「…あ、すまん」


白石は掴んだ自分の手を見て、それからぱっと離した。


「…じゃあ今度こそ、ちょっと」
「おん」
「………」
「………」
「………行かへんの」
「…その前にちょっと聞きたいことが」
「なん?」
「…………」
「…ん?」
「……忘れた」
「なんやそれ」
「まあまあ。じゃあ、とりあえず、また後で」
「おん」


笑う白石をよけて、財前が行っただろう方向へ走る。
白石に掴まれた腕が熱い気がした。
本当は忘れてない。白石は私のことどう思ってるの、って。財前に言われて気になったからそれだけ聞いとこうと思ったのに。
ちょっと聞くのが怖かった、なんて、私はどうしたんだろう。
何が怖いかわからないのが怖い。





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