私は今目の前にいる人物を見上げたまま硬直していた。というか目に焼き付けていた。
やばい、かっこいい。



「……なんすか」



目をそらすこともなくだるそうにこっちを見ていたピアスの少年、財前君はやっぱりだるそうにそう言った。
やだなにそれかっこいい、いや、財前君は何しててもかっこいい。テニスだろうがサッカーだろうがなんでもできちゃうしかっこいいし。
このように聞いたり見たりしてれば分かるように、私は財前君のことが好きだ。
改めて彼の全身を眺めると、部活の後なのかユニフォームを着ていた。今まで何を見てたかというと、それはまあ顔だ。



「あの、先輩」



はうあ!
思わず叫びそうになった。
財前君の言う通り、私は彼のひとつ上の3年生。
白石とか謙也が財前君と話してるのを見て一目惚れした。
っていうかちょっと待て、先輩って把握してくれてるんだ。やばい。



「聞いてます?名前先輩」

「はうあ!」



今度こそ私は叫んでいた。
だって、だって今名前呼ばれたよ!
ちょっと話したこととかは割とあるけどまさか名前を認識してもらえてるなんて!



「な、何で名前…」

「謙也さんに聞いたんです、よく見かけるなー思て」



それはあなたを見るためこうして度々2年生の廊下前をうろうろしているからです。



「そ、そうですか。どうもどうも」

「はあ」



財前君は不思議そうな顔をしていた。そりゃそうだ。教室を出たらそこに立っていた女がが直立して黙り込んだあげく奇声を発しわけのわからないことを言っているのだから。
でもとりあえず会話が成立していることが嬉しくてにやにやするほっぺたを押さえる。するとと財前君が吹き出すのが聞こえた。



「どないしたんですか」



両手で押さえた私の顔が面白かったらしい。変顔をみられたのはショックだけど財前君の笑顔と比べたらなんでもない。
笑いを押し殺そうとする財前君までかっこよく見えて、私はまた見入ってしまった。



「財前君」

「はい?」

「かっこいいね」

「…は」



……はっ!やってしまった!
本人に向かってそんなこと言い出すなんて、下心丸出しの変人もいいところだ。
財前君を見ると、さっきまでの私みたいに目を見開いたまま固まっていた。
やっぱりかっこいい。いや、そうじゃない。



「や、いや。今のはね、ほら、なんかほら、財前君かっこよすぎてうっかりというか…」



ばか、それじゃあ本音だよ!
更なる失言に、頭を抱えて悶絶するしかない。
もう何考えてるかも分からなくなっていると、何かに両腕をつかまれる。財前君の手だった。
指細っ、長っ!
そのまま観察していると、今度は鼻先ほどの近さに財前君の顔が現れた。
ちょちょちょ!



「なっ、ちょっ、ざっ!」

「ほんまですか」

「な、何!」

「さっきの、本気で言うたんですか」

「さ、さっき!?」

「っていうか先輩、そろそろはっきり言うて下さい」

「はい!?」



そんな至近距離で話されて、もはやパニックな私に財前君はとどめをさした。



「俺のこと好きやろ」



あんなに回りをうろちょろしていたんだから、財前君にしてみたらそんなの否定する方が不自然なほど分かりきったことだったに違いない。
分かってて聞くような意地悪いところだって私は好きなのだ。
顔に血液が集まってくるようなほてりを感じながら、私は高速で首を縦に振った。



「うん、好き」

「俺もっすわ」



さっきまでとは打って変わって意地悪な笑みを浮かべた財前君と私の唇が重なって、その間目を見開きっぱなしだった。



「次は目閉じて下さいよ」



言いながらまた近づいてくる財前君を見て、色々なものが吹っ飛んだ気がした。




101125

gdgd\(^O^)/
ごめんなさい





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