「白石!」
「どないしたん?めっちゃ顔険しいで。苦痛でしゃーない嫌だもう死にたい自分は屑やって顔や」
「それどころでは…っていうかそんな酷い顔なの私。謙也知らない?」
「ああ、謙也なら部室で埋まっとるよ。今金ちゃんが救出しとる」
「役立たずめ…」
「謙也に用でもあったんか」
「湿布をね、湿布を頼んだんだよ湿布を」
「湿布が欲しいんは分かった。なんや、怪我したん?」
「肩凝りが酷すぎてさ」
「ははは」
「白石までうざい」
「嘘やて。働きすぎとちゃう?」
「そうだよ。ダンベルなんか持たせるから、コート整備なんてさせるから…」
「あー、すまん」
「いや、悪いのは謙也と財前なんだよ後でぶん殴ってやる謙也だけ」
「財前は」
「や…、らない」
「ビビりか」
「ち、ちがうし!」
「まあええ。どんくらい痛いん?」
「ぎゃああ!つんつんしないで!」
「そないに痛いとは思わんかった、堪忍な」
「そのわりににやにやしてるけど。楽しいんでしょ、私が痛がってるのが楽しいんでしょ」
「まあな」
「くっ……!」
「というのは冗談で」
「ほんとか?」
「そのままやと部活にも影響出るやんな」
「そうですね」
「しゃーない、俺が治したろか……ってなんでそんなに距離とるねん」
「いや、さっきそれで痛いめにあったから」
「痛いことせえへんよ」
「…ほんとに?」
「優しくしたる」
「………」
「なんやその顔。痛い方がええんか?マゾか?」
「優しくでお願いします」
「それでええ。どこが痛い?」
「肩が…特に右肩が」
「あー、確かにこっとるな」
「だから痛いってば!」
「出してみ」
「え」
「肩、治すんやろ」
「ああ、はい」
「…変なとこで素直やな」
「うん?」
「なんでもあらへん」
「うん。じゃあお願いします」
「おん」


ちゅっ


「シャラアアアップ!!」
「うっさいで名前」
「なぜ!なぜ私のファースト肩キスを奪った」
「なんやねんそれ。なんならファーストキスもろたろか」
「ううううう……」
「……何してはるんですか部長」
「おお、財前。なんちゅーか、治療?」
「はっ、とぼけても無駄っすわ。俺はこの携帯に収めたで、名前先輩が部長にファースト肩キスを奪われる瞬間を」
「趣味悪いで財前」
「ばらまこ」
「あっ、こら財前!待ちや!」
「え、ちょっと白石!お前話はまだ…!」
「名前、湿布取ってきたでー」
「遅い!」
「すまんすまん、うっかり段ボールにぶつかってしもて」
「崩すなって言ったのに!」
「まあまあ。湿布貼ったるから肩出しや」
「ああ、うん。………あ」
「ん?」
「治った」


100929
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