「ごめん、明日仕事になった…」
「え、」
明日は久しぶりに二人でお出掛けしようねって言って、2ヶ月前から仕事の調整をしていたはずなのに…
久々のデートだったから、私も気合いを入れて美容院に行ったりネイルを新調したりと今日の休みも潰してせっせと準備をしていた
それはツナも分かっているからか、心無しか髪の毛先がしょげているように見える
「そう……、わかった。残念ね」
「………ほんとごめん」
「わかったって言ったでしょ?何度も言わないで」
別にツナは悪くない
だから彼に八つ当たりをするのはお門違い
それは分かってる。
──でも楽しみにしていた分、ショックも大きい訳で……
「ごめんなさい、ツナが悪い訳じゃないのにね」
「ううん、美織が楽しみにしてくれていたのは分かってるから。勿論俺も楽しみだったんだけど……」
苦笑を洩らしながらツナがこちらに近づいてきて、私の髪を優しく掬う
「サラサラだね、綺麗だよ」
「ありがと。だって明日の為に美容院に行ってきたんだもの」
「そう…、ごめんね」
「執拗いのは嫌いよ」
何度も謝られるのも許すのも嫌い
私がムスッと返せば、彼もどう声をかければいいのか分からなくなったのだろう
後ろからそっと抱き締めてきた
「美織はさ……、よく言うアレ、言わないんだな」
「"アレ"…?」
私と仕事、どっちが大事なの?ってやつ
私の髪に顔を埋めながら聞いてきたのは、社会人のカップルなら誰しも一度は聞くと噂されるもの
「ふふ。聞いて欲しかったの?」
「………ん」
「……聞かれても困るクセに」
ちょっと意地悪な返事をすれば、彼も少しムッとしたようで少し強引に私を振り向かせて口を塞いできた
「───んッ、」
待って、と言いかけて口が開いた隙を彼が見逃すハズもなく…
少し強引に舌をねじ込んできて絡ませる
「ぁ、………ふッ、」
「────っはァ…………、美織が意地悪するから悪いんだぞ」
「そ、そんなつもりじゃっ」
「それならほら、」
さっきのやつ、聞いてみてよ
私と仕事、
(ど、どっちが大事なの…っ!?)
(そんなの美織に決まってるだろ)
(──あッ、だめっ)
(俺明日頑張らないといけないし)
(先にご褒美ちょーだい、ね?)