体育座りをした体勢で、念入りに足の爪に紅を熨(の)せていると、目の前の少年はそのにおいが鼻についたようで、一つ小さくくしゃみをした。鼻をすすったルフィはそっと尻を引き摺ってキッドに近付いて、幼い子供のように目を輝かせてそれを見て覗いた。何を塗ってるんだ?、と問われたので、キッドは持っていた赤い刷毛(はけ)をルフィに見せて「爪紅」と言った。
「つまべに?」
「ペディキュアともいう」
ルフィは何でそんなものを爪に塗るんだという怪訝な顔をしたが、それ以上は何も聞かず、またキッドの爪に馳せられた刷毛を眺めるように見ていた。
十の爪が赤く塗られると、キッドはルフィの足を指さして、こちらに伸ばせと命令した。
「足?」
「そう、こっちに」
胡坐をかいた状態に座り直したキッドは自分の膝をぽんぽんと叩いた。そっと伸びてきたルフィの足首を掴んで、その爪に己と同じように赤のペディキュアを施してやった。独特の感覚に少年はうえっ、と短く声を上げた。
「わっすげえー、真っ赤」
キッドは、首を伸ばして自分の爪をもっと近くで見ようとした少年の頭をばちんと叩いた。
「動くな馬鹿。色が爪からはみ出るだろ」
どんどん赤に塗られていく自分の爪をルフィはじっと眺めた。全ての爪に赤が熨せられるとキッドはルフィの足を丁寧に元の場所に戻した。
「乾くまで動かすなよ」
「自分の足じゃねえみてえ」
自分の足をまじまじと見て少年は感嘆の声を漏らした。
「次は口だ」
そう言って小さな顎を掴んでこちらに引き寄せた。前のめりになってキッドを見上げたルフィの口に、今度は赤いリップブラシを馳せ合わせた。
「げっ、何だこれ」
「口紅だ…ってこら食べるな!」
下唇に塗った口紅をルフィは歯で噛んで食べてしまった。これじゃあまるで本当の子供だ。
「うえーまじい…」
「当たり前だ。いいから口を閉じていろ」
と言うもののルフィは唇の違和感に耐えられず舌を出してそれを全部舐め取ってしまう。その度に眉間に皺を寄せてまじいやめろと訴える。キッドはそんなルフィを見兼ねて、自分の唇に紅を強く押し塗るとそれをルフィの口に強く押し付けた。焦ったルフィはぎゅっと目を瞑ってキッドの服を握り締めた。
「ふぇ…」
ルフィの吐息まじりの声を聞いてはっとキッドは我に返った。口紅を付けるだけのつもりだったのだが、つい癖でルフィの口内に舌を捻じ込んでしまった。彼はキスの度に涎をだらだらと垂らすから、こんなことをしたら余計に口紅が取れてしまう。すぐに離してやろうと舌を元の位置に戻すと、今度はルフィの舌が遠慮がちにこちらへ伸びてきた。どうやらキスに応えてくれたらしい。キッドは体温がかっと一気に揚がったのを覚えて、気付けば更にルフィの唇を深く貪っていた。
爪紅も口紅もただの独占欲の表れでしかないのに、それでも必死にしがみついてくる少年がキッドにとっては愛らしくて堪らなかった。キッドは腕をルフィの腰に巻き付けて彼との少しにがいキスを丹念に味わった。





おあんさまへ相互記念!「ルフィにペディキュアや口紅を塗ってあげるキッド」でした。
最後の最後まで悩んでキッドの爪の色は赤にさせて頂きました…原作じゃ黒なんですよね…すいません´`拙いものではございますが宜しければお持ち帰りください!素敵なリクエストありがとうございました!

梅子より


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