ルフィが風邪をひいた。

早いものでもう八月だ。高校生は夏休みに入り大量の課題に追われながらも休暇を楽しんでいたらしいが、
「サンジぃ、あついよ」
「バカ、歩き回るな。病人は寝てろ」
季節の変わり目にやられたらしい。先月の梅雨も重なって、喉からくる風邪が流行っていたから仕方がないことだとは思うけれど、しかし。
サンジは小さくため息をついた。ゾロは仕事で、ウソップはバイトに出掛けた。例の如く大学も行かず家で暇を持て余していたサンジは、ルフィの看病をすることになってしまった。
サンジは騒がしく家中を歩き回るルフィを、無理矢理狭い部屋のベッドに寝かせた。ルフィの部屋は相変わらず汚い。脱いだ服はそのままだしゴミも出さない。幾分前に掃除していた筈だがそんな面影はもう見つからなかった。
「熱計るか」
「それより腹減ったよサンジ、肉食べたい」
「そんな重いもん食ったらゲロ吐くぞ」
「いやだ、肉が食いてえ、肉う」
いつになく我が儘なルフィにサンジは少しばかり苛立った。それに加え時折、ゾロの言葉が脳裏に甦る。ルフィに手出したらタダじゃおかねえぞ―…
「サンジ?」
ルフィが上体を起こしてサンジの顔を覗き込んだ。ルフィの大きな瞳を見た瞬間、サンジは無意識のうちにベッドに乗りかかっていた。そして不安そうにサンジを見上げたルフィの服に手をかけていた。無意識だった。脳で考えるより前に手が出てしまったのだ。
俺は一体何に腹を立てているのだろうか。サンジは頭の隅で考えた。ルフィの我が儘に対してだろうか、ゾロの忠告に対してだろうか。確かにゾロの忠告は図星だった。一線を超えさえすればルフィは自分に振り向いてくれると信じていた。少なくとも会った女は皆そうだった。
「サンジ…、どうしたんだよ」
サンジはルフィの身体の上に跨った。そしてルフィの顎を掴んで彼の唇にかぶりついた。
「んんっ」
本能的にルフィはサンジの腕を掴んだ。顔を背けようとするが、サンジに顎を捉えられているため動けない。サンジは構わず舌を突っ込んだ。
「んふっ、んっ」
やはり風邪をひいているからなのか、ルフィはすごく熱かった。口内はその比ではなく、舌が火傷してしまいそうだった。
がくんとルフィの腕の力が抜け彼はベットに身を預けたが、サンジは構わずキスを続けた。
一通りルフィの歯列を舐めとると、ゆっくりと彼の口を離した。ルフィの口許は、はしたなくも艶やかに涎が垂れていた。赤い顔をして信じられないという目でサンジを凝視する。
「…サンジ…?」
もう、二度と普通のルームメイトには戻れないだろうと、覚悟する。あまりゾロやウソップのことは考えないようにした。
「ルフィ…」
サンジはルフィの服を強引にたくし上げた。


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