何することもなくいたずらに大学へ出向いたが、すぐに面倒くさくなったので講義も受けずに大学を出た。途中声をかけてきた大学の女友達と昼間からホテルへ行ったから、わりかし今は気分がすっきりしている。女は夜までホテルに居座ることを強要してきたが、サンジはこれ以上自分の感情に靄をかけたくないと思いそれに応えることはしなかった。家へ着いても何もすることがなかったので、とりあえずテーブルの椅子に座り煙草をふかした。何もすることがなかったから大学へ行ったのに、女とセックスしただけでまた何もすることのない家へ戻ってきてしまった。自分は何をやっているんだと自己嫌悪に陥る。最近ずっとこの調子だ。
原因は目に見えている。ゾロとルフィが付き合うようになってからだ。想像していないことではなかったのに、ショックは馬鹿みたいに大きかった。直接ルフィから「大嫌いだ」と言われた自分に望みなどハナからなかったが、なぜあの男でよかったのだろうと考えることはある。
(俺があいつよりも劣るわけねえ)
とは思うがまずゾロなら無理矢理ルフィを襲ったりしない。否、百歩譲って襲ったとしてもルフィの泣き面を見たら流石に身を引くだろう。性格やルックスが劣る劣らないではなく、ただ単に品格の問題だった。ゾロはルフィを大事に想った。サンジはルフィに暴行を加えた。その違いは天と地の差よりも大きい。
(クソ…)
サンジは歯を噛みしめた。少し煙草が千切れた。椅子の上で膝を抱えて、頭を埋めて物思いに耽った。

ゾロがルフィに告白すると決心したあの日の夜、彼はルフィが風呂から出てくるなりその話を持ちかけた。サンジはキッチンにいたが、ゾロの声はきちんと聞こえた。ルフィちょっといいか―なに?―話がある―なに?―それは俺の部屋で―…という二人の会話は今でも鮮明に思い出せる。それから二人はゾロの部屋へ消えた。リビングが静かになった間、サンジは二人が何を話しているのか想像した。まずゾロが告白する。きっとルフィは頭にハテナを浮かべて、終いには好きって何だ?とか聞く。そしてゾロは焦ると同時に少しショックを受けるだろう。そこまで想像してサンジは鼻で笑った。まったくいいザマだ。そのまま失恋してしまえばいいのに。
するとしばらくして部屋の戸が開く音がした。キッチンから顔を出すと部屋からゾロが出てくるのが見えた。彼は冷蔵庫の方へふらりと向かい中から焼酎を取り出した。どうだった、とサンジが聞くと、夢みてえだ、と答えが返ってきた。ゾロの頬は少し紅潮していて目もいつになく輝いていたから、告白は成功したのだと理解することができた。最初は案外その事実を受け止めることができたが、だんだんと時間が経つにつれて心に靄がかかってきた。何をするにもあの二人のことしか考えられなくなって、今何をしているのだろうかとかどこまでいったのだろうかと思いに耽るだけで夜も眠れなかった。

もう自分は末期だと思った。ルフィが好きで好きでたまらない気持ちはいつに増してどんどん大きくなっていった。いつしか先ほどのセックスのおかげで得た爽快感も何処へ、心がまた曇り空になっていった。


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