焼き肉屋を赤字、いや経営破綻にまで追い詰めるような量の肉を食い漁ったルフィは、腹をぱんぱんに膨らませて満足そうに自宅へ帰った。
ゾロにはいつでも準備はできていた。
あとはタイミングを見計ってルフィを自室へ誘って二人きりの時間を作るだけだった。ルフィへの告白を一ミリも止めないサンジには少し違和感を覚えたが、邪魔者がいないに越したことはない。何も言ってこないのならばこちらが気を遣う必要もないだろう。ルフィのことを諦めてくれたのなら好都合なことこの上ない。
するとルフィが風呂から上がってきた。バスタオルを肩にかけて髪は濡れたままだ。風呂空いたぞ、とリビングのソファで暇そうにテレビを見ていたウソップに声をかける。ウソップはおうとだけ返事をしてすぐに腰を上げた。向こうのキッチンではサンジが明日の朝食の仕込みをしている。今しかないとゾロは直感的に思った。
「ルフィ、ちょっといいか」
「ん?」
大きな目をこちらに向けて、ルフィがどうしたのだと言うように首を傾げた。
「話がある」
「なに?」
「それは俺の部屋で話す」
そう言ってゾロは彼の細い腕を引っ張って自室へ連れ込んだ。ルフィをベッドの上に座らせると自分のその隣に座った。彼はタオルで髪を乱暴に拭きながら、ゾロの部屋きたねーと床に散りばった書類の山を踏んづけた。お前の部屋よりかマシだ、と言おうとしたが今は部屋の片付けの話をしている時ではない。ゾロは口を噤んでじっとルフィを見つめた。
「…なに?」
その視線に気付いたルフィが苦笑いをしてゾロを見る。ずっと伝えたかった言葉を吐くために、ゾロは口をゆっくりと開いた。
「ルフィ」
「ん?」
「好きだ」
「ん?」
ルフィはまた首を傾げた。それから少し考えるように下を向いてしまった。冷たい沈黙が心を痛める。ゾロはこりゃ振られるだろうなと少し自暴自棄になった。考えるということは自分からそう言われるなんていうことを想像していなかったということで、それは自分などこいつの眼中にはなかったということだろう。するとルフィが顔を上げた。
「好きとかよくわからん」
眉間に皺を寄せてルフィが難しそうな顔をしたので、今度はゾロが「ん?」と首を傾げた。
「わかんねえって何だよ」
「よく学校の女の子にも好きだって言われたりするけど、そんなのかしこまって言うもんでもないだろ?おれだって学校の友達はみんな好きだ。きらいなやつなんていない。でもそう言うと必ずぶたれるんだ」
わたしの気持ちなんて何も分かってくれないのね、ってな。ルフィは自分の頬を擦った。
本当にこいつは女心のおの字も知らないんだな、とゾロは少し呆れた。これじゃあ彼女もいないんだろうなと同時に安心もした。
「だからおれ、好きとか言われても困るんだ。おれもゾロが好きだよ。サンジだってウソップだって好きだ」
「…」
「…なんて言ったらぶつ?」
ゾロは首を左右に振って、膝の上にあったルフィの手を握った。忠誠を誓うように、または愛を囁くようにしてルフィに身体を寄せた。
「それでもいい。俺と付き合ってくれ」
「ゾロと?」
「いやか?」
「おれ男だぞ?」
「何今更なこと言ってやがる」
俺は本気でお前が好きだから、と本日二度目の告白。二度目にして途端に恥ずかしさが込み上げてきて頭蓋骨が溶けそうになった。もうあまり長い時間ルフィと目が合わせられなくなって、視線がベッドや床をゆらゆら泳ぐ。少し間を置いて、「ゾロがいいなら」とルフィはゾロの手を握り返した。


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