下心はあったけれど無理強いなんてしたくなかった。相手の意見を尊重するのが当たり前だし、サンジはずっとそうしてきた。ルフィに対してだって例外ではない。大事にしたかった。あわよくば、あわよくば、そう思っていただけで。

「ア゙っ」
こんな筈じゃないこんな筈じゃない。そう自分を否定しても身体は言うことを聞かない。
ルフィの頭を枕に押し付けて、肉片が引き千切れようともお構いなしに、雄をルフィの中に突っ込んで、ぐちゃぐちゃにして、気持ち良いもクソもない、非生産的な行為に耽った。
「い、っぁ」
それでもルフィが声を出してくれているのに、サンジは少し嬉しくなった。
(ああ油断していたらモノごと全て持っていかれそうだ)
壁にかけてあった時計に目をやる。もうすぐウソップがバイトから帰ってくる時間だ。そうもたもたしていられない。サンジはルフィの内壁めがけてラストスパートをかけた。
「ァアっ、あ」
シーツの皺が深まる。身体を動かす度にいやな音。驚くほど冷静な頭とは裏腹にどんどん興奮してゆく自分の下半身。太股に、ルフィの鮮血。
「ア゙ッ、さ、んじっ…っひぐ」
ああ、もうそろそろかもしれない。最早長年の勘ではあったが、経験がものを言った。
「ルフィ…っ」
ぎゅうぎゅう。ああ痛かろうに。それでもルフィはサンジを離そうとはしなかった。

そしてルフィが高らかに喉の奥を鳴らす。声にならずに、その場で爆ぜる。水風船が破裂したように、ルフィの精液がシーツの上に飛び散った。

サンジは少し考えた挙句、ルフィから自身を引き抜いてその背中にぶっかけた。ルフィはそれから、ベッドに沈んだままぴくりとも動かなくなった。気を失ってしまったのだろうか。サンジがルフィの髪に手をかけると、部屋の外で玄関の戸が開けられる音がした。しまった、ウソップが帰ってきてしまった。
サンジはルフィの背中にかかった自分の精液をティッシュで拭き取り、それからウソップに気付かれないようにして風呂場に直行した。ある程度のものを洗い流して、平然を装った顔でリビングに戻った。リビングではウソップが頬杖をついてテーブルに居座っていた。
おかえり、と声をかける。上擦った声になってしまった。サンジの言葉にウソップは浮かぬ顔でただいまと返した。よかった、別に不自然じゃなかったみたいだ。サンジは内心安堵する。
「ルフィはどうだ?」
今一番聞きたくない名前を言われ背筋がきんと凍った気がした。うろたえるな、うろたえるな…深呼吸、深呼吸。
「寝てる、多分」
椅子に腰を下ろしながらあまりウソップの目を見ないようにして言った。
「そうか」
これに対してもウソップは何も言ってこなかった。
(…ウソップで本当によかった)
これがゾロだったらどうなっていただろうか。考えるだけで冷や汗が出る。
俺さ、とウソップが言葉を続けた。
「海行けなくなっちまった。バイトがさ、休めなくて」
申し訳なさそうにウソップが話す。そうだ、そういえば海に行くだなんだと以前騒いでいたっけ。
無理もない。お盆に休ませてくれるサービス店などそうそうないだろう。だからこの男は先程から沈んだ顔をしていたのか。
「ルフィには本当申し訳ねえんだけど」
三人で行ってくれるか?
ウソップの言葉にサンジは耳を疑った。三人、というのはウソップを除いた三人ということか。そんな状況は断固拒否だ。サンジとルフィの仲が気まずくなったことをゾロが察せば、 何を言われるか堪ったものではない。
ウソップが行かねえなら俺も行かねえよ。そう言うとウソップが驚いたような顔をした。えっ、という言葉を連呼して、いいのか?と顔を覗かれた。
「だってもともとあいつ皆で行きたいつってたろ。それに俺が行かなくてもゾロがいりゃ海まで行けるわけだから」
流れるように自分を正当化した言葉が出てきた。ウソップは腑に落ちないようか顔をしていたが、最後にはきちんと納得してくれた。
するとまた玄関の開く音がした。ゾロが帰ってきたらしい。酷く頭痛がしてきた。今後のことを考えるときりきりと胃が痛くなる。
(…全部俺が悪いんだが)
重たい腰を上げて、サンジは二度目のシャワーを浴びに風呂場へ向かった。また部屋が臭いと言われるのだろうか。あいつでさえ、今回の相手があのルフィなどと思うまい。サンジはシャワーの冷たい水に当たりながら、この状況を回避できる尤もらしい言い訳を考えた。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -