「わざと?」
「だ、だから、それはエースに気づいてもらいたかったっていうか」
その場の空気に流されるように、俺もルフィに想いを告げた。照れくさそうに笑ったルフィを何度もきつく抱き締めた。そして今日シャンクスと話したことを言った。シャンクスの言っていた「本当のこと」をルフィに聞くと、彼は恥ずかしそうにわざとなんだと口を開いた。
「シャンクスに相談したら、そうしろって言うから…」
「気付くどころか余計勘違いするっての」
「ごめん…」
ルフィはシャンクスに恋の相談相手をして貰っていたらしい。そこで言われたのが「わざとエースの前で俺の話をしろ」というもので(これがあいつの言う「本当のこと」だった)、彼は律儀にその助言を実行したのだが、予想を外れ俺がそれを誤解しシャンクスに会いに行ったところを、ちょうどルフィに見られてしまうという最悪の事態に陥った。どちらにとってもマイナスのことしか起こらなかったシャンクスの助言は何の役にも立たなかったと思われた。しかし
「でも何かしなきゃ絶対エースは気づいてくれなかっただろうし」
というルフィの言葉で、遠回りではあるが一応ルフィと俺を引き合わせてくれた手助けであったと思い直すことにした。
しかしシャンクスがルフィのことを好いているという考えについては肯定だろう、と思う。でなければ俺の話をしろだなんてことは言わないだろう。それとも好きな奴から他の男の話を聞かされる辛さを、俺に味あわせたかったのか。何にしろ、俺とシャンクスはルフィによって同じ思いをしていたのだ。
(…まったくこいつは)
厄介な奴だ。鈍感というか、ただ単に馬鹿なだけかもしれないが、始末の悪いくせに憎めないから何とも腹立だしいこの上ない。
明日はちゃんと迎え来てくれんだろ、と彼が聞いた。俺が頷くと、彼は満足そうに綻んだ。俺はルフィの頭を撫でて、そしてどちらかもなくキスをした。


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