授業中の高校は何とも静かだ。俺は大学の遅刻を覚悟でルフィの高校へ向かった。来賓用の玄関を入ってすぐにある事務室に入り、シャンクスを放送で呼んでもらう。幸いこの時間、彼に授業は入っていなかった。
放送をして十分後、いつものようにシャツにだらけたネクタイをしたシャンクスが事務室に入ってきた。彼は一瞬俺を見て驚いたような顔をしたが、すぐに目を細めてこんにちはと笑った。
「一体お兄さんが俺に何の用だい?」
「ここでは話しにくい」
俺は事務室の扉に目配せした。彼はすぐにその意味を察し、それじゃ外でと言って事務室の戸を開けた。二人で廊下に出ると彼は再一度、何の用でしょうと俺に聞いた。
「惚けんな」
「そんな。惚けるも何も皆目見当がつかない。俺が何かしたかな」
シャンクスは両手を上げた。そしらぬ顔も演技の内だとは思っていたが予想以上にそれが腹立だしく感じ、俺はぶっきらぼうに、ルフィのことだと言った。すると彼は予想通りだと言うように口角を上げて一、二度首を縦に振った。ルフィがどうかしましたか、そう言った彼の目はしっかりと俺を捉えていた。
「おかげ様で、ルフィがあんたの話しかしねえんで」
「そうですか」
「もう俺が迎えに来ることもない」
不束な弟ですけどよろしくお願いします、と頭を下げると、俺の内心の予想に反し彼は驚いた顔をしていた。それから「何か勘違いされてるのかな」と苦笑を浮かべて首を傾げた。
「勘違い?」
「俺とルフィが付き合ってるとか」
俺が何も反応しないのを見て、彼は口を大きく開けて笑い出した。「それは立派な勘違いだ」
「でもルフィはあんたとキスをしたと俺に言ってきたんだ。それでも付き合ってないというのか」
「ハハ、ルフィがそんなことを」
「ルフィを疑うつもりはない」
「本当のことはルフィの口から言った方がいいと思うんだがな」
「何が本当のことだ。ルフィにつけ込んでんのはあんたなんだろ」
かぶりを振ったシャンクスが再度口を開こうとすると、チャイムが校内に響き渡った。途端にあちらこちらから生徒の声が聞こえてくる。彼は「場所を変えないか」と言って前方にある客室を指さした。
「結構だ。俺はもう大学に行く」
「いいのか?」
「あんたの口からなんてもう何も聞きたくない。今日ルフィに聞く。それでいいんだろ」
彼は黙って頷き片手を上げた。俺は踵を返して事務室には何も言わずに高校を出た。
大学に着いた後も、授業中は先程のことで頭の中が占領されていて、取るも手につかずな状態だった。しかし何か考えようかと思っても、何から片付けていいのか分からなかった。ただただシャンクスの言った「勘違い」という言葉だけが俺の中を駆け巡っていた。


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