「好きだ」
ルフィの言葉に俺は無意識に目を閉じた。すっと深呼吸、心臓がばくばくと波打っている。俺は乾いた唇を噛んだ。彼の匂いが、体温が、俺の心を鷲掴みにする。
「好きだ、エース」
更に強く、腰に回されていたルフィの手に力が加わった。俺の鎖骨に額を擦り付ける彼の行為に酷く誘惑された。俺もより一層彼の肩を強く抱いた。
彼の口から発せられる言葉に簡単に左右されてしまう俺は、本当に馬鹿者だ。俺がルフィに到底敵わないということはルフィが一番よく分かっているから、こうやって嘘か本当かも分からない空っぽの言葉を俺に投げつけるのだ。
「好きだよ」
「分かったから」
「エースも言ってくれよ。好きだよって」
「…好きだよ、ルフィ」
俺がそう言うとルフィは優しく笑って目を伏せた。しよう。ルフィが口を開く。俺の服を握り締めて猫みたく甘えた素振りを見せて、ちらりと上目遣いをして。
しかし空気に流されてはいけない。俺は自分に言い聞かせた。ルフィに乗せられてはいけない。
(傷つくのはどうせ自分なのだから)
俺はかぶりを振ってもう寝なさいとルフィの頭を撫でた。彼は不満気に頬を膨らませ何でだと理由を問いかけた。エースはおれのことが嫌いなのか?したくないのか?おれとのエッチが気持ち良くないのか?捲し立てる捲し立てる。泣きそうな顔をして俺の顔を覗き込んで、おれはエースが好きだよしたいよエッチしたいよ、と喚く。
すると俺はいつの間にかルフィをその場に引き倒していた。彼の満足そうな顔を見て、はっと我に返る。俺はすまんと謝って早急にルフィから身を引いた。危うくまた俺はルフィを襲ってしまうところだった。彼が怪訝な顔をして何で謝るんだと俺を睨んだ。
「やめるなよ。昨日みたいに抱いてくれればいいんだ。別にもう優しくしろなんて言わない」
「そういうことじゃない」
「じゃあどういうことなんだよ。もう、おれもうだめなんだ、エースが欲しくて、欲しくて欲しくて欲しくて欲しくて」
死にそうなんだ。
彼が自らの手で着ていたタンクトップを剥いで見せた。ほんのり色付く小さな胸の突起が顔を出す。エースに触ってほしいんだ。彼は手持ち無沙汰にしていた俺の腕を掴んで、自分の胸へ持って行かせた。彼の乳首の感触が指にそっと伝わる。
「かたくなってるだろ?興奮してるんだ」
「…ルフィ」
「なあ下も触ってくれよ。すごい、もうおれ漏らしちまいそうだ」
宥めの言葉だって今の彼には何の効果もない。彼が自分の腰を俺の腹に押し付けた。何処でこんな技を教わってきたのだろうか。しかしそんなことを冷静に考えられるほどの余裕はもう俺には残っていなかった。押し倒した時点で身を引いても、結局のところ終着点は昨日とは何ら変わりはしなかった。情けなかった。けれど自分ではもうどうしようもできなかった。
手の平を返したように俺はルフィの唇を荒く貪って、今度こそと言うように含み笑いをした彼のズボンに手を突っ込んだ。


かりこもの 思ひ乱れて 我が恋ふと 妹知るらめや 人しつげずは
(私の心が入り乱れて恋しく思うとは、人が告げない限り、お前は知るまい)


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