一人医療室に籠って医学書を眺めていたチョッパーは、やはり小さな身体では作業がしにくいと思いヒトの体型に変身して再度席についた。ああ幾分と楽になった。遠くにあるものもすぐに手が届く。
すると医療室とダイニングを繋ぐドアがゆっくりと開けられた。反射的にそちらに顔を向ける。
「…チョッパー?いるか?」
ドアからひょっこりと顔を出したのは、麦わら帽子を被った小さな少年。
「わあ、ルフィ、どうしたの」
怪我でもしたの?と聞くとううんと首を横に振られた。
「どこか痛いところがあるのか?」
外部の損傷ではないのなら頭痛や腹痛の類だろうか。しかしルフィはまた首を振る。そしてチョッパーの目をじっと見つめて、口を開いた。
「わかんねえことがあるんだ」
その目は酷く純粋で無垢で、チョッパーはずっと見ていたいと思った。何を、と首を傾げると、少年は平然とした顔を保ったまま、「男同士のせっくす」とその目とは似ても似つかない淫猥な言葉を発した。

椅子からずり落ちそうになった尻を元に戻して、チョッパーは深呼吸をした。心臓の音が煩く脳を支配する。拍車をかけるようにルフィが言葉を続けた。
「ああでも、この前ウソップに教えてもらったから女となら、おれだって知ってるよ。でも男となんて、そんなん考えたことねえから…おれだけ知らなくてみんな仲間はずれにするんだ。サンジに聞いたらチョッパーに教わるのが一番だって言うから、だから」
チョッパーは腹の底からサンジを恨んだ。何てことを吹き込んでくれたのだ。そういう話なら自分が一番の得意分野なくせに。
「やっぱチョッパーもわかんねえ?」
ルフィがチョッパーの顔を覗き込むようにして身を屈めたので、チョッパーは内心どきりとしてしまった。それに加えて良い具合に医者としての意地が重なってくる。何て都合の良い相乗効果だなんて自虐しながらチョッパーはかぶりを振って、「俺は医者だぞ」と席を立って少年の肩をやんわりと抱いた。

「じゃあまずは下全部脱ごうか」
ルフィをベッドに座らせてそう口頭を伝えると、彼はえっと驚いた表情でチョッパーを見返した。
「あああ、嫌ならいいんだ。でもルフィが知りたがってることはこういうことなんだよ」
「…」
不安を隠せないという顔をしていた少年が、恐る恐る一枚ずつ下肢に纏っていたものを剥いでゆく。腹をくくったのだろうか。
適度に日焼けた肌が明確に露わになった。彼はズボンと下着をベッドの下に放り捨てると、再度チョッパーの目を見た。
「これでいいのか?」
「うん。じゃあそしたら尻をこっちに突き出して四つん這いになって」
流石の彼も警戒心を剥き出しにしてきた。ベストの端を伸ばして自分の前を隠しながら彼は、本当にこんなことをするのかと力無く医者に聞いた。
「そうだよ。男はね、女とはちょっと違うんだよ」
ルフィの躊躇いがもどかしくて、チョッパーは無理に少年の腰を掴んで体勢を変えさせた。
四つん這いになった彼は枕に顔を深く沈めた。手は微かにシーツを握り締めている。
ああ、ヒト型に変身しておいて本当に良かった。狸のままでいたらこんなルフィの行動には耐えられなかっただろう。
「最初は気持ち悪いかもしれないけど少し我慢しててくれな」
チョッパーは彼の双丘の間に舌を馳せた。ひく、と彼の身体が震えてすぐに、ぁ、というとぼつかない声が聞こえてきた。丹念に孔の周りを舐めてから、口を離して今度は親指の腹でぐっ、ぐっ、と孔をマッサージしてやる。ある程度緩くなってくると、ルフィの安堵の息が耳を掠めるようになった。
「そうそうリラックス、リラックス。声は我慢しなくていいぞ」
チョッパーは肩手で双丘を割り、もう片方に持っていた軟膏剤のチューブ先をそこに宛がった。息をつかせる間もなくチューブを捻り潰す。勢い良く出た透明色の軟膏剤がルフィの後孔を濡らした。
「…ふ、ぁ…」
「本当は渇きにくい専用のローションの方がいいんだけど、今は軟膏しかないんだ。ごめんな」
指にも軟骨剤をたくさんつけて、ぐっと彼の後孔に押し付けた。すぐにぐずぐず蕩けてきて、軽くチョッパーの指を一本咥え込んだ。
「ぁ、…ん」
「あと二本ここに指を入れるからな。痛かったらちゃんと言えよ」
「ふ、うっ、くぁ」
小さな隙間を見つけてもう一本指をゆっくりと挿入した。びくんと先程より大きな震えが彼の身体を襲う。
「きついかな」
「いた、い、チョッパー、っ」
案の定彼が音を上げた。痛みが癒えるまでできるだけゆっくり指の律動を開始した。最初は痺れるような痛みに顔を歪めていた彼も、指の運動を繰り返されると徐々に綻んできた。チョッパーは三本目の指にも丹念に軟骨剤を練り込み、タイミングを見計らって其の孔に差し込んだ。
「あ、…ぁっ…」
痛みはなさそうだ。チョッパーは安心した。三本の指の先を内壁に擦りつけたり、ばらばらに動かしたりすると彼は一層高い声を上げた。
そしてチョッパーは気付く。これじゃあ普通にルフィを襲っているのと何ら変わりはしない、と。ルフィは確かにセックスを教えてほしいとは言ったが、今自分がしていることは教えていることじゃない。ただ単に、ルフィが無知なことをいいことにして無抵抗な少年を貪っているだけだ。
チョッパーは三本の指を一気に引き抜いた。ああ、という彼の漏らした声と共に荒い息つぎが部屋を埋める。チョッパー?とルフィはこちらを向いた。
「ごめんルフィ…、やっぱ止めよう」
「そんな、…何でだよ…」
「俺には無理だ…ごめん、…サンジとかにでも教えてもらってくれよ」
ルフィの身体から離れると、彼は咄嗟に「じゃあ最後にいっこだけ教えて」と言ってチョッパーの腕を掴んだ。のそのそと正面を向き足を開脚する。その中心をチョッパーに見せるようにして、はあ、と一息。それからふるふると睫毛を震わせて上目遣いをした。
「ここが痛いんだ、むずむずして、痛くて、でもどうしたらいいかわかんねえんだ」
変色したまだ薄皮に纏われたままのそこに、彼はチョッパーの手を近付けた。
チョッパーは生唾を飲み込んだ。無知というのは罪だ。知らず知らずにこんなにも人を煽る。
彼の腕を振り払ってその代償に、彼の足の間に顔を埋めた。ふぁ、と満足そうに声を漏らして笑ったルフィの顔を目の端に捉えながら。


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