「ちょっと月子ちゃん借りるから」
「行ってきますね」
「ん……ああ」

平気なふりして内心嫉妬してるんだろうな。そう思いながらつい先日結婚宣言をした琥太にぃから月子ちゃんを強奪して僕は姉さんの墓参りに来ていた。実は墓参りに連れていくというのはずっと前から月子ちゃんと約束していて、それがようやく果たされ今此処に居る。月子ちゃんは途中に寄った花屋で作って貰った白い花束を抱えて墓前に立っている。僕は線香に火を点けてそのうち一つを彼女に渡した。

「ねぇ、何で花束白にしたの?」
「有季さんって、私の中で白が似合うイメージなんです」

彼女は線香を差し花束を置くと黙って手を合わせた。線香の匂いがふわりと辺りを包む。煙は風に揺れて白く流れた。
ずっと許せなかった事が一つ許せるようになって、僕はようやく素直な気持ちで墓前に立てるようになった。それは全てではないけどきっと大部分が彼女のおかげだ。そうでなかったら僕も琥太にぃも今もまだ這いずり続けていただろう。

「……ありがとう」
「何がですか?」
「いや、何でもない。それよりさ、君は嫉妬しないの?」
「誰にですか?」
「姉さんに」

昔の僕なら絶対聞かなかっただろう。姉さんばっかり大事で何も見えてなかったし見ようともしなかった。でも気持ちに整理がついて、彼女の事姉さんの事考えたら避けて通れない道な気がした。僕だったら絶対嫉妬する。君はどうするの。気持ちに整理はついたけれどまだ少し割り切れない部分もあって、ちょっとした意地悪だ。

「うーん、嫉妬っていうか……こう言うのも凄く失礼だしなんだか上手く言えないんですけど、」
「言ってみて」
「永遠っていうのは、羨ましいって思います。有季さんは、琥太郎さんの中で永遠だから」
「そっか」
「でも、琥太郎さんの気持ちも分かる気がするんです。写真の有季さんの笑顔、すごく幸せそうで可愛くて、この笑顔の為なら何でもしてあげたくなっちゃうなって思っちゃいました」

その横顔が学生時代よりずっと綺麗で僕は黙ってそれを見ていた。

「似てると思うけどね。君の笑顔も。でも一緒じゃないよ、重ねたりしたら姉さんにも君にも失礼だから」

風が吹いて、彼女の髪が風に揺れる。空の青は姉さんの好きな色で、でもそれより好きなのが白だっていうことは彼女に黙っておこうと思う。

「ねぇ月子ちゃん。幸せになりなよ」
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