*捏造、ジャンル、CPごちゃまぜ注意 log


(stsk 宮地 未完)




水底にはコンクリートが敷いてあった。
私は口からこぽこぽと金魚のように空気を吐き出しながら水底を這っていた。水中へ沈んだビルは倒壊する訳でもなく、まるで始めっからそこに在るべき物のようにどっしり建っていて、割れた窓ガラスから海藻だとか磯巾着がゆらゆら揺れているのが不思議だ。私のすぐ横を熱帯魚の大群が通っていく。水色の半透明の身体を持つ一匹が私にぶつかり、そこでようやく私という生き物の存在に気付いたらしい。驚いたように逃げていく様は可愛らしいなと思う。見上げれば白い太陽がゆらゆら揺れていて私の口からまた泡が吐き出される。幾つか零れたそれらは水面へと逃げるように上がって行った。こうして見ると世界の終わりというのは意外に美しいのだなあと思う。正直、拍子抜けだ。現実にふと帰った途端息苦しくなって私は水面を目指す。ゆらゆらと陽光を反射する白い水面は好きだ。
そうやってようやく水から抜け出し思い切り息を吸えば聞こえたのは怒鳴り声だ。


「夜久!お前はまたそうやって、」


宮地くんだ。彼は道路脇に自転車を停めたままガードレールから身を乗り出していた。心配性なんだから。私は一番近いビルの屋上によじ登って水を吸って重くなった髪の毛を絞った。夏服はべちゃべちゃで身体に張り付いて気持ち悪いけど、どうせこれを着る必要もなくなるから別にいいと思った。

夏休みが終わった。でも夏は終わらなかった。暦では9月だというのに気温は未だ8月上旬と変わらないまま。このまま続いてあと三ヶ月後に世界は終わるという。異常気象の連続で遂に南極北極の氷も溶け始めて、世界は水没する運命にあるらしい。暑くなって終わるのは相応しい気がした。寒い中終末を迎えるのは何だかロマンチックすぎる気がする。
神様の思惑通り、津波等の災害や疫病で人口は徐々に減っている。それなのに私の周りだけは奇妙な位平和だった。平地の水没により実家に帰る手段を失った私達は山の中、相変わらず学校に通っている。授業も将来もないのに私達は教室でくだらない話を続けている。日常は変わらない。短いようで長い三ヶ月を私達は少し持て余している。
あと、三ヶ月だ。三ヶ月で一体何をしようか。私はかつての日常の残骸を探し始めた。水没したビルの群れ、そこに潜って、見上げる。空の青も海の青も違うのにいずれその境界線すら失くなる。


「夜久、」


いい加減にしろと宮地くんがお怒りだ。私は建物の屋根やら屋上を伝い宮地くんの元へと近付く。伸ばされた腕を掴めば簡単に身体は引き上げられた。


「危ないと言ってるはずだ」
「でも、綺麗だよ」
「夜久」
「……ごめんなさい」




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