*捏造、ジャンル、CPごちゃまぜ注意 log


(stsk 星月と夜久※性転換につき性別が逆転しています)




なんだかとても静かだと思ったら、外は雨が降っているらしい。書類を整える手を止めて灰青を写す窓ガラスをぼんやり眺めた。静かに落ちる雨で世界は薄くやわらかい膜に包まれたように優しい。だからあの人の眠りがいつもに増して深いのかもしれない。雨音に紛れてちいさく聞こえる寝息も安心して眠る幼子のようでとても愛おしかった。
眠り姫と呼べば姫なんて呼ばれる年齢じゃないと苦く笑うのだけど、その可愛らしい寝息と寝顔のあどけなさは姫と呼んでもおかしくないんじゃないかといつも思うのだ。
そんな眠り姫を起こしてしまわないよう、まとめた書類を丁寧にデスクにしまって次は本の整理に移る。床に重ねられたそれに手を伸ばした瞬間、しゃらっとカーテンが開く音がして重そうな瞼を持ち上げながら欠伸をする姫こと星月先生が現れた。

「すみません、起こしてしまいましたか?」
「いや、うるさかった訳じゃなくて静かすぎて起きた……雨が降ってるの、道理で静かだと思った」

惜し気もなく晒されたデコルテゾーンを隠すようにストールを巻き、先生は大きく伸びる。いつもならしっとりと柔らかい翡翠色の右側の髪がはねて妙な方向を見ていた。
欠伸をすれば髪と同色の長い睫毛に囲まれた高貴なアメジストからほろりと涙が一つ。大人の癖に先生は隙が多過ぎる気がした。

「……せんせい、寝癖ついてる」
「気にしない、どうせあんたくらいしか見ないでしょう」
「そんなんじゃ嫁の貰い手がなくなりますよ」
「別に結婚願望もないしね」

適当に笑って先生は立ち上がった。華奢な身体を守る白衣に俺は時々嫉妬する

「……俺じゃ、駄目ですか」

自分で思っていたよりずっと低い声が出て驚いた。
雨のせいでぬかるんだ空気に声が滲むように溶けていく。

「お子様は管轄外なの」

先生はずるい。
気怠い空気を漂わせて、大人のくせに隙だらけで、そこにつけ込もうとした瞬間に一瞬で壁を作りあげてしまう。
そのくせ俺を、沢山いる保健委員の中から俺だけを特に頼りにして期待させて付け上がらせる。こうして毎回保健室の片付けに呼ばれると、嫌でも勘違いしたくなる。男手があると何かと便利でしょう?
たったそれだけでも舞い上がった俺はただのガキだ。一方的で甚だ勝手だとは思うが腹が立った。散々期待させて突き落として。俺の気持ちに気付いてるくせに弱みなんて見せて。弱みを見せるくせに触れさせてはくれなくて。

「……先生、」

その白い手を強く握った。悔しいのと、もどかしいのと、全部込めて握った。痛いんだろう、先生は眉を寄せている。

「狡いですよ。大人のくせに隙だらけで、散々期待させて、そのくせつけ込ませてくれなくて。
……なんで俺じゃあ駄目なんですか。先生、俺だって、お子様だけど男なんですよ」

先生は困ったような、泣きそうな顔でこっちを見ていた。ああ、そんな顔させたくなんかないのに。何やってんだよ俺。でも、でもさ、これだけは譲れないんだよ。俺はお子様でもなんでも男として先生の事が好きなんだよ。
無理矢理飲み込んだ言葉はひどく渋い味がして、これを先生は普通に飲み込んでいるのかと思うとものすごく情けない気分になった。
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