ナシラ


 髪を染めた。カラーは今流行りのホワイトアッシュ。勿論いきつけの美容院でやってもらって。お姉さんが「今回は特に自信作よ」とウインクをくれた。窓から入る秋風が揺らすウェーブがかった自分の髪が、ミルクティーのようなミルクコーヒーのような甘い色。カットもしてもらって私の気分は最ッ高。
 新しいブーツを履いた。給料日の次の日に一目惚れして買ったやつ。それからクリーム色のコットンレースのついた流行りのワンピースに、臙脂色のセーター。メイクもばっちり決めた。新作のグロスも塗った。最後に誕生日プレゼントにもらった小さなシルバーのネックレスとマフラーも付けて、今日の私は完璧だ。

 ねえ、ナシラ、あなたもそう思うでしょ?私の半身、ナシラはにゃあんと鳴いた。もう、その「にゃあん」はどっち?いいの?悪いの?ふふ、分かってる。お前は優しい子だから今日の私はデートにぴったりって言ってくれたのよね。ありがと。お前も一緒に行く?にゃあん。
 ああ、彼は今日の私を見てなんていうんだろう?

「待たせたか?」
 ううん、今来たところ。慌てて走ってきたのが分かるくらい肩で呼吸をしている彼に、ナシラもにゃあんと返事をした。お仕事で忙しいのだという彼らしい。ふふっ、ねえ、そこの公園の通りに新しいカッフェができたの。そこで少し休憩しましょう、お仕事から慌ててきてくれたんでしょ?
 そう言って笑うと、彼も優しく微笑んだ。「今日はえらく気合入ってんな、似合ってる」と少し屈んで頬にちゅっとキスをくれた。ああ、なんて幸せなんだろう!

 真っ白の絨毯を私の新しいブーツと彼の黒い革靴が踏みしめると、しゃぐりしゃぐりと歓喜の声を上げる。ナシラは私と彼の間の少し先で、私たちを導くように小さな肉球で落ち葉を鳴らす。大好きな彼と半身のナシラに囲まれて。私はとっても幸せ!
「楽しそうだな」
「ナシラが?」
「お前のスタンドじゃあないさ。 ×××が、だ」
 もちろん、当たり前じゃない!こらえきれずに彼に飛びついて、ふたりで白い絨毯にダイブした。背中から飛び込んだ彼はそれでも私を抱きしめて、痛えと笑う。少し先にいたナシラは目をまんまるにしてこちらにやってきた。それから、可愛い声でにゃんっと鳴いた。

 絨毯のうえに寝転んでいる彼を押しピンで留めるように覆いかぶさる私の。ホワイトアッシュに染めた髪が肩からこぼれて、彼の頬を撫でた。彼のきらきら光るブロンドと、私の髪色が混ざってトーストみたいな色をになる。ふたりでおでこを合わせて。くつくつと喉の奥で笑って。彼の骨ばった男らしい手が私の頬を一撫でしてこぼれた髪を耳にかけてくれて。それから、優しい目をして彼は甘く囁くの。

「愛してる。星が空を愛するように。白雪がやさしく大地を包むように」
「ふふっ、私もよ、プロシュート」

 私のスタンドの名前はナシラ。この子と一緒なら、いつだってたくさんの幸せが訪れるの。


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