嗚呼、妖艶
隣の席の忍足君は、休み時間になると必ず読書を始める。しかも、イヤホンをつけて音楽を聴きながら。
そんな忍足君を私はいつも気付かれないように横目で見てる。たまにイヤホンから音漏れしてきて軽やかな音が耳に入ってくる。
どんなジャンルの音楽聴いてるの?
何の本を読んでるの?
音楽聴いてて本の内容頭に入ってくるの?
気になりだしたら止まらなくて、思いきって聞いてみることにした。
『忍足君』
「なん?七瀬さん」
自習で教室が騒がしい中、彼はまだ読書をしている。私は頬杖をつきながら顔だけ横に向けた。
『その本、面白い?』
「まぁまぁなや」
『ふーん。恋愛もの?』
「あぁ、読んでみるか?」
『いや、私本読むの嫌いなの』
「じゃあなんで自分聞いたん・・・?」
ちょっと苦笑いの忍足君。
『あとさ、』
「ん?」
『忍足君って、なんで音楽聴きながら本読んでるの?』
「俺んこと、見ててくれたん?」
『いや、あの、だって隣の席だし・・・』
口角を上げてどや顔を見せてくるから、恥ずかしくなって机についていた肘を下ろし、下を向いてしまった。
実際見てますよ。見てますけど、そんな面と向かって言わなくてもいいじゃないか。
顔を上げられなくて、格好をそのままに口を開いた。
『内容、とか、頭に入ってくる?』
「あー・・・あんま入ってけぇへんな」
『じゃあ、どうして?』
すると、忍足君は顔を近付けてきて、
「七瀬さんの声聞いとると、欲情してまうねん」
私にしか聞こえない声で耳元に囁いてきた。
『な、よ、よく・・・!?』
「・・・なぁ」
責任、とってや
嗚呼、妖艶
(誘っとるとしか思えへんわ)
(さ、誘ってないっ!)
* * * * * *
きっちりかっちり責任とりたいです(^ρ^)ジュルリ
美味しい侑士ありがとうございました!
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